検索窓
今日:47 hit、昨日:194 hit、合計:1,862,059 hit

第34話 ページ35

.


無言で赤くなるAを見ていたら、ふっと浮かんだ二文字


「好き」


思わず髪に触れる距離で、その耳に伝わるだけの大きさでストレートに、率直に、思った事を口走って。
帽子を取り上げれば少し涙目のA。



「_____私も、?」

目を逸らしてお茶を濁す黒い瞳。
それはばっと顔をあげて、俺に口をわなわなと震わせる。

『…性格悪いですよ』


そんな事を言うAはまだまだ真っ赤で。
_____その口から聞きたい、なンて余裕ぶるけど。


「(……恥ずかしいのは、俺の方だっての)」


今にも沸騰しそうな頭で帽子をかぶり直し、落ちてきた髪を耳にかける。

ああ、俺は後から後悔するタイプらしい
「好き」だなんて、家を吹っ飛ばした加害者が言う台詞じゃねェし


『中原さん』

「はい」


反射的に敬語が出た。
後ろを向いたAは、先程の気弱な声とは真逆の、凛とした声で俺を呼んだ。


『今日は携帯、買って下さい』

「お、おう」

『明日は銀行の口座を作って、それから役所で身分証明書と保険証を再発行するんで、付いてきてください』

「判った」

『明後日は家を見に行きます』

「…はい」


後ろを向いたままのAは淡々と、今後の計画を並べると『じゃあ早く行きますよ』と背を向けたまま車に向かった。

「はは」

やっぱり、Aだけには頭が上がらねえのな、なんて思った時だ。
Aは4歩程度歩くと、ピタリと止まる



『_____好き、……ですよ』

「へ」


ボソリ、と前方から聞こえた小さな声。

腑甲斐無く沈んだ俺は思わず顔を上げて、目は丸く、いつの間にか口は開いていた


「今、なンて」

『早く行きますよ』


聞き間違いだろうか______いや、ンな訳ねェ
だってほら、Aはせかせかと車に乗り込んで往く。
少しぶっきらぼうに口を尖らせて、唸るように_____。



「ッたく、“ 狡い ”のはどっちだよ…」



油断すれば緩みそうな口元を腕で抑えながら、俺も急いで車に乗りこんだ。
助手席には、外を見詰めこちらには毛ほども興味のない女


「なあA」


ムスッとしていて、頬杖をつく。そんなAはどこか微笑ましく思えて


『家、勿論注文住宅ですからね』

「判ってる」

『携帯も一番最新のやつですから』

「Aサマの仰せのままに」



『……今日の夜ご飯はオムライスが良いです、』




少しの間、出たのは何とも可愛いお願いだ。
ポカンとした俺は一瞬思考が停止して、でも直ぐに、ふはっと笑った



「任せろ」




.

第35話→←第33話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (3124 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
3377人がお気に入り
設定タグ:文スト , 文豪ストレイドッグス , 中原中也   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

レインボー文豪娘 - このぶっ飛んだ始まりと、「また家を吹っ飛ばしに行く」というセリフが素晴らしすぎました。最高でした。 (4月14日 22時) (レス) @page40 id: d65177cced (このIDを非表示/違反報告)
しおぽんら(プロフ) - テトさんと同じなのですが、プリ小説という小説サイトで活動していますか?設定もセリフも同じなので気になってコメントさせてもらいました。リンクはこちらですhttps://novel.prcm.jp/novel/U7KPVPevcPuDxlQlBkXn (9月2日 17時) (レス) @page1 id: 535c2b64b5 (このIDを非表示/違反報告)
テト(プロフ) - 初コメがこんなのですみません。あの…プリ小説という小説で活動していますか?なにやらプリ小説内で先程こちらと似たような作品を見つけまして…もしかしたらこの作品がパクられているかもしれないのでコメントさせてもらいました (8月30日 15時) (レス) @page1 id: e3b6735391 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫もふお - 神作品ありがとうございますっ!!! (8月18日 12時) (レス) @page18 id: 9c4f5ea239 (このIDを非表示/違反報告)
未栄 - 最高すぎて鼻血出るかと思いました (8月1日 13時) (レス) @page40 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:高澤白 | 作者ホームページ:http:/  
作成日時:2017年8月6日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。