第29話 ページ30
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心当たりなら沢山ある
例えばさっきだって
上司の前を良い事に挑発的な発言をしてみたり。
はたまた朝には家を飛び出したり。
_____でも、それと之とは話が違うじゃないか。
倒された背凭れ。
「なァA」
ドクン、と胸の奥に沈む低い声。
助手席で組み敷かれて居るなんて事実、中原さんを避けていた私には、朝に続けて糖度が高すぎて。
『中原、さ』
息も掛かる繊細な距離を必死に耐える
近い、狭い、熱い。
如何してこうなったのだろう。
成人過ぎの大人が二人。
熱も振動も何もかも伝わっちゃって、必死に目を合わせない様に、目だけは合わせない様にそっぽを向くけど。
「目ェ逸らす余裕があンのかよ」
『な、だって──』
「ヘェ、「だって」、何だよ」
鎌をかけられ堪らず上を見る。
外には普通に人が居るのに、この人は何処吹く風で私を抑えるまんま。
素直に伝えれば善いものの──
「朝より顔赤い」
『五月っ蝿い』
何処か意地を張ってしまう私が居るのだ。
だって家を壊した男に、初対面の日も昨日も朝も、今も、“見蕩れてしまって居た”、だなんて認めたくも無いから。
また、この新しく真剣で少し御機嫌斜めな中原さんに少しドキッとしてたり。
……なんて、馬鹿か私は。
よく“こんな”状況でそんな冗談が云える口になったな、と、次には本気で思った。
「朝逃げたッつーことは、それは無言の肯定ッて事だよな?」
突然中原さんに爆弾を落とされたから。
『違、』
「違うッてのに照れる必要があるか?」
図星、だけれど。
脊髄反射の返事は見事に切り捨てられ
“朝の一言を思い出す”、だけの罠にまんまと掛かった私はきっと───
「ほら、首まで熱い」
反論できなくなる。
卑怯だ、意地が悪い、狡い。
だってこの人は、それを見越して髪を退かしてまで耳の後ろに触れながら耳元で云ってくるから。
唇をきゅっと噛み締めて、弱々しい私が映る瞳から目を逸らす。
「逸らさせる訳ねェだろ、」
筈だった。
輪郭を捕まえられて隠すも覆うも許されないとは。
『…悪魔、』
直ぐに消えてなくなる私の声
「その悪魔に絆されてる奴が何云ってンだか」
目の前で不敵に口角を上げる男は宛ら、腹の底から性格の悪い、タチの悪い悪魔。
無理矢理合わさる青い瞳、愉しそうに歪む耽美な口元。
その一つ一つが様になっていて腹が立った。
時だ。
──コンコン
誰かが、呑気にこの車の運転席の窓を叩いた音が響いたのは。
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レインボー文豪娘 - このぶっ飛んだ始まりと、「また家を吹っ飛ばしに行く」というセリフが素晴らしすぎました。最高でした。 (4月14日 22時) (レス) @page40 id: d65177cced (このIDを非表示/違反報告)
しおぽんら(プロフ) - テトさんと同じなのですが、プリ小説という小説サイトで活動していますか?設定もセリフも同じなので気になってコメントさせてもらいました。リンクはこちらですhttps://novel.prcm.jp/novel/U7KPVPevcPuDxlQlBkXn (9月2日 17時) (レス) @page1 id: 535c2b64b5 (このIDを非表示/違反報告)
テト(プロフ) - 初コメがこんなのですみません。あの…プリ小説という小説で活動していますか?なにやらプリ小説内で先程こちらと似たような作品を見つけまして…もしかしたらこの作品がパクられているかもしれないのでコメントさせてもらいました (8月30日 15時) (レス) @page1 id: e3b6735391 (このIDを非表示/違反報告)
黒猫もふお - 神作品ありがとうございますっ!!! (8月18日 12時) (レス) @page18 id: 9c4f5ea239 (このIDを非表示/違反報告)
未栄 - 最高すぎて鼻血出るかと思いました (8月1日 13時) (レス) @page40 id: af42dbf40e (このIDを非表示/違反報告)
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