雨 ページ10
それは一瞬だった。
私の頭は
「……な、へ」
口をぽかんと開けたまま______否、空いた口は閉じずに体温は上昇する。
ポン、と手の乗った感触。それは間違う事のない、
理解が追い付いて来ない。それよりか思考で辿り着く前に体が発熱して
「おい、大丈夫か?」
「____へ、…あ、ああ!何がですか!?」
現実と夢の境が判らなくなる位に頭は機能していない。あああもう!調子に乗るな!浮かれるな!莫迦!と心の中で一生懸命に唱えた。
明日は晴れですかね〜、なんて、顔を見られない様に空を見上げたりしちゃって
でも
「な、何笑ってるんですか!」
「はは、ッたく……本ッ当、
直ぐにバレて最終的に笑われる。
そんな事を繰り返しても懲りずに、私はまたその一言を胸に刻んでしまう。
名前も家も境遇も知らないけど
「…それ、どういう意味ですか」
少し攻めてみたり。少し位善いよね、神様。
本当は好きな食べ物だって音楽だって、色だって、帽子さんの事なら何でも聞きたいの。
だけど私達は、“知らない”で成り立って居るから
「……」
『帽子さん』は少し考える素振りを見せ、それから真剣な目付きで私を見詰めた
「それは手前が_______」
嘘のない真実で満ちた瞳に胸を鳴らしてその声に耳を研ぎ澄ます。
二人の視線の間に雨音だけが響いて___
「手前が面白いからだよ、」
「え"」
帽子さんはそう云いながら立ち上がり、また先輩に叱られンなよ、とニッと笑った。
それはまるで神様に『莫迦め』と云われている様で
呆気を取られているうちに帽子さんは何時もの帰路に着いていた。
「ちょ、帽子さ____」
待って下さい!と、正直に引き留められないのは他人だから。
_____今私、自然に帽子さんって云えたよね?
行け、今だ、その勢いで私は息を大きく吸い込む
黒い背中に向かって雨音になんか負けない声で
「次もお手合わせお願いします!じゃなくて、また、____また次の雨の日も私の仕事の愚痴を聞いてくれますよね?!」
異能特務科、日外Aの声が響き渡る。
_____違う、そうじゃないだろ私……。
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にんじんさん。(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます…! (2019年6月4日 16時) (レス) id: 13fcb4bada (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - あなたもしや…、中也推しですか!? (2019年1月7日 0時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 白井なでしこさん» コメントありがとうございます。ありがたい言葉ばかり並んでおりますね笑とにかくありがとうございます!頑張ります! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 月ノ輪さん» ひゃー、お世辞でも嬉しすぎます…。前作もありがとうございます!そのコメントだけで次も頑張れますので期待に応えられるように書いていきますね!コメントありがとうございました!! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - ユーナ橘さん» ありがとうございます…!少しでも雨に対する思いが伝わればいいな〜と思います。こちらこそ最後まで読んで頂きありがとうございました! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
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