豪雨 ページ42
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“「___……Aはね、特務課の新人でありながら“警察”という顔も持ち合わせているんです。
突然の責任放棄。優秀な彼女だからこそ、その罪は重いでしょう」”
“「ですが、彼女は…Aは新人の中でも首席の成績を持つ
……云いたい事が、君なら判りますよね。」”
______Aを取り戻せるのは、君しか居ないんですから。
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雨を待っていた。
お互いに背負っていた物を知った今は、ただ雨を。
教授眼鏡が最後に「本当に困った子ですよ」と何処か懐かしげにボヤいて、颯爽と帰って行ったのを覚えている。
あの日の様な夕立は来なかった。
次の日もそのまた次の日も、空は青くて太陽は鬱陶しいほど輝いてる。
だから今日、やっと_____
「ずっと待ってた。ずっと、さ、雨が好きになッちまったみてェだ」
突然降り出した豪雨に紛れて、手前は居た。
恋しかった雨。
待っていた雨。
その雨が、_____と、俺は何もかも置いてそこへ向かった。
雨脚の強くなる道を辿って走ってやっとだ。
やっと、やっと手前に_____
「泣くなッて、ほら、ごめんな」
自分の傘を持って後ろから抱きついた。
帽子が濡れた、靴が汚れた、なんざどうでもよかった。ただひたすら、手前が居るから
咄嗟に手を伸ばして。
すれば、冷えた体に触れた。
声を押し殺して、ぼろぼろと溢れ出した涙を手の甲で拭う手前が目の前に居た。
それは断片的で、
「…帽、し、っさ」
泣きじゃくった声が前から聞こえた。
雨音は聞こえているのに、それはまるで引き立て役のように遠くで響いている
「本物、なんです…ね、?本当に、っ、本当、」
「……あァ、俺はちゃんと此処に居る。」
やっと聞こえた手前の声。
ぎゅっと腕を握る、小さな手。
震えた声は、何にも問わずに息をした。
晴れが続いた毎日はどこか息苦しくて
手前を探しては、心の中に蟠りが生まれてそいつが心情を乱すし。
眩しいだけの太陽じゃあ夜に隙間が出来ちまう。
「……やっぱり俺は手前じゃなきゃ厭なンだよ」
ボソリと呟いた先でまた、手前が泣く。
それを隠すように雨は歌うから、傘に隠れた二人の影は誰にも邪魔されない。
「____なァ、A」
静かに空気を吸って、静かに笑う
「俺のこと、名前で呼んでくれねェか」
ずっと望んでいた事を。
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にんじんさん。(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます…! (2019年6月4日 16時) (レス) id: 13fcb4bada (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - あなたもしや…、中也推しですか!? (2019年1月7日 0時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 白井なでしこさん» コメントありがとうございます。ありがたい言葉ばかり並んでおりますね笑とにかくありがとうございます!頑張ります! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 月ノ輪さん» ひゃー、お世辞でも嬉しすぎます…。前作もありがとうございます!そのコメントだけで次も頑張れますので期待に応えられるように書いていきますね!コメントありがとうございました!! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - ユーナ橘さん» ありがとうございます…!少しでも雨に対する思いが伝わればいいな〜と思います。こちらこそ最後まで読んで頂きありがとうございました! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
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