雨 ページ37
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雨が好きだった。
それがどんな日であろうと
なんとなく、ふと空を見上げて色を伺ってしまう位には、きっと。
仕事場へ向かう道中、街の隅から聞こえてきたのは見事に『梅雨が明けますねえ』のニュースキャスターのフリートーク。
小さく息を吸って耳を澄ました後、無意識に目を細めた
「傘、…は、要らねェか」
忘れた。と呟いて手元を見る。
梅雨に呑まれた人々は軒並み傘を手に持って___
ああ、あいつはどう思うかな
梅雨に感化された傘達は_____その目にとまる傘は、手前のもんじゃあない。けれど、一番に似合うのはやっぱり手前だって思いだしてしまうから
帽子を深く被って気を紛らした。
薄い青を引き伸ばしたような空も、傘も、雨の匂いも、…笑い声も全部、期待しちまうから。
だからそれを忘れさせるように丁度朝、首領から一本の電話がやって来た。内容は簡潔で合理的。「やっと足取りが取れたよ」の一言だけだった
梅雨も終わる
任務も終わる
「ごめんな、……手、払って」
この関係も約束も、気持ちも全部____
呟いた先に手前は居ないし
これで最後だ。そう思いながら、誰にも気づかれない様にふっと笑った
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裏切り者の死体を見下ろした数秒後
梅雨明け前の夕方
そいつ_____雨が、降り始めた。
ポツリポツリと勿体ぶって
傘なんざ持ってねェよ、死体はどうしてくれンだ、と空を見上げて
ため息を吐こうとした時
見覚えのある声と顔を向けて
黒い目を見開いた手前はそこに居た
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にんじんさん。(プロフ) - 素晴らしい作品をありがとうございます…! (2019年6月4日 16時) (レス) id: 13fcb4bada (このIDを非表示/違反報告)
白狐(プロフ) - あなたもしや…、中也推しですか!? (2019年1月7日 0時) (レス) id: b607d0f086 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 白井なでしこさん» コメントありがとうございます。ありがたい言葉ばかり並んでおりますね笑とにかくありがとうございます!頑張ります! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - 月ノ輪さん» ひゃー、お世辞でも嬉しすぎます…。前作もありがとうございます!そのコメントだけで次も頑張れますので期待に応えられるように書いていきますね!コメントありがとうございました!! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - ユーナ橘さん» ありがとうございます…!少しでも雨に対する思いが伝わればいいな〜と思います。こちらこそ最後まで読んで頂きありがとうございました! (2018年3月30日 13時) (レス) id: 9d2314264a (このIDを非表示/違反報告)
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