第２２話 ページ22
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『太宰に会ったよ』
そう思うのに。
出かけた言葉が喉に引っかかった。
触れようとした手をピタリと止めて歯を食いしばる。
嗚呼、判ってる。Aを泣かせるのはいつも彼奴で。こんな顔をさせるのだってこの世で一人、彼奴しか居ない。
Aが必要として居るのは俺じゃない。
「如何だった」
だから。そんな顔させたくなくて俺は。昔から、手前だけには云えねえんだよ。
『……変わらなかった』
嗚呼……変らねェな。
俺も手前も太宰も何も。何も変わらねェんだよ。
今目の前に居るのは俺でも、Aの目には昔から変わらず─────。
「………」
なあ、無理に笑うなよ。泣いた後は隠さなくていい。辛いなら泣いたっていい。上を向いてくれ。手前は無邪気に、我儘振りかざして笑ってりゃあいい。ほら。A。俺はもう、手前のそんな顔は御免なんだ。───だから。
拳を握って苦虫を噛み潰したような顔で俯いた。
───�狃�わらせてやる�瓮辰同召辰燭世蹇�
其の儘俺は方向転換して、強い足取りでリビングに向かった。
一人暮らしには広すぎる部屋に、昨日ようやく入り込んだ他人の荷物。ソファの隣。女ひとりじゃ到底持ち運べないであろう大荷物。
洗面所の化粧道具。くしに置きっぱなしのヘアアイロン。風呂場のシャンプー。全部余すこと無く綺麗に鞄に突っ込んで玄関に─────玄関で立ち尽くす、Aの目の前にドサリと置いた。
『………中』
「出てけ」
置かれた荷物が、ドサッと音を立てる。
見詰めた先のAが、丸い目で俺を見た。
『……出てけって』
「もう一晩泊めてやったろ」
笑っちまうよな。こうでもしねえと手前の目に映れないなんて。
嘲りで歪みそうな口元を抑え、まるで睨み付けるように恐ろしく低い声で突き放す。
「手前の居場所は、此処じゃねェよ」
人を傷付けるのは簡単だ。
冷たい声で、言葉で、戸惑う瞳を切り離せば善い。
何かを云おうと口を動かすAの肩を押した。
左手に提げたゴミと鍵を奪い取って、荷物と一緒に扉の外へ押し出して。
ちょっと待ってよ、何でって声が聞こえたと思う。
抵抗したって手前の力じゃ如何にもなんねえよ。
手荒くてごめんな。
でも、俺は手前に笑って欲しいから。
守りたかった。繋ぎたかった筈の手を離して。
一生開かぬ金属製の扉が閉まる。
静かになった部屋。顔を上げて携帯を取りだした。
「おい青鯖。
手前の好きな女、今頃ひとりで泣いてンぞ」
＊
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空浮 - 気づいたら全部読み終わってました！めっちゃ感動しました！ありがとうございました (3月26日 16時) (
レス) @page45 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
（3）(プロフ) - この儚い感じがめちゃくちゃ好きです！！なずなの花言葉見て尊敬しました！素敵なお話をありがとうございました！！ (9月22日 22時) (レス) @page43 id: 3b6fa5f09a (このIDを非表示/違反報告)
べべべーべ(プロフ) - ぼろっぼろに泣きました。とても素敵な作品でした。中也の立場にも胸が締め付けられました…ありがとうございました (9月12日 19時) (レス) @page45 id: 49ba69b450 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - aさん» 密かでも死ぬほど嬉しいですここまで長くなってしまい申し訳ありませんでした！並びにお付き合い頂いて本当にありがとうございました！完結できたのは読んでくださった皆様のおかげなので…コメント噛み締めて余韻に浸らせて頂きますね…ありがとうございました！ (2023年3月31日 20時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - yuuki Sさん» 最後まで本当にありがとうございました…！何度もコメントくださってとても嬉しかったです。私のモチベでした( ᐪ ᐪ )♡寂しいと言われこちらも寂しくなってしまいました。終わらせるのが惜しいです。本当に最後までお付き合い頂きありがとうございました！ (2023年3月31日 19時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)
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