第１話 ページ1
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「おかえりなさい、有島A君」
顔を上げた先。
晴天の光を受けて微笑む中年男性が私の名前を呼んだ。
『ただいま戻りました────
私の髪がさらりと揺れた。
此処は、ヨコハマに聳える高層ビルの最上階。
限られた者だけが入る事を許される、空に最も近い部屋────首領執務室。
猫足の椅子に腰掛け窓を見詰めた首領の隣。
同じ様に左を見る。
そこには、港を象り造られたヨコハマの街が広がっていて
私にとって────実に、四年ぶりの景色だった。
「久しぶりのヨコハマは如何かね？」
首領の問いに眼下を見詰める。
『……新しい物が増えましたね』
乱立した住宅、歩く人々、流れる雲。
何を取っても
四年という月日は、余りにも長かった。
人が産まれて歩き出すのには一年と数ヶ月。
街が生まれ変わるには、十分過ぎる年月だ。
『………けど』
私に視線をくれる首領が、きょとんとしながら瞬きをした。
『……相変わらず変わらない。空気が、美味しいです』
此の街は、何も変わっていない。
思わず綻んだ口元。それを映す鏡の様に、目を丸くした首領にも遅れて顔に花が咲いた。
「其れは善かった」
『まあ
「すまなかったね。すっかり下に、今日と云う事を伝え忘れていた」
軽口も云える様な懐かしさにじんわりと温まる心。
改めて首領の方に向き直り、手を揃えてから口を開いた。
『首領、報告は逐一ご連絡して居た通りですが』
「嗚呼、御苦労だったねA君。
お陰でうちは、領地を順調に拡大し続けているよ。
…そうだねえ。末端も、鎮圧してからは特に問題なく地に足が着いているし…」
『……と、申しますと…？』
顎に置かれた白い手袋が、ゆっくりと肘置きに戻された。
悩む素振りを止めた首領は閃いた様に「あ」と小さく呟き、そして私に目を合わせた。
「A君。今日から君に、長期の休暇を与えよう」
────きゅうか？
其の、マフィアらしからぬ
聞き慣れない単語に、思わず目をぱちくりさせた私。
『……休暇、ですか？』
「A君には四年間も一人で頑張って貰ったからねえ」
『……成程…？』
何処か適当な感じもするが、首領の言葉は絶対。
故に────
「久しぶりのヨコハマだ。
折角だし、散歩でもしてみたらどうかね」
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空浮 - 気づいたら全部読み終わってました！めっちゃ感動しました！ありがとうございました (3月26日 16時) (
レス) @page45 id: 29094487c6 (このIDを非表示/違反報告)
（3）(プロフ) - この儚い感じがめちゃくちゃ好きです！！なずなの花言葉見て尊敬しました！素敵なお話をありがとうございました！！ (9月22日 22時) (レス) @page43 id: 3b6fa5f09a (このIDを非表示/違反報告)
べべべーべ(プロフ) - ぼろっぼろに泣きました。とても素敵な作品でした。中也の立場にも胸が締め付けられました…ありがとうございました (9月12日 19時) (レス) @page45 id: 49ba69b450 (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - aさん» 密かでも死ぬほど嬉しいですここまで長くなってしまい申し訳ありませんでした！並びにお付き合い頂いて本当にありがとうございました！完結できたのは読んでくださった皆様のおかげなので…コメント噛み締めて余韻に浸らせて頂きますね…ありがとうございました！ (2023年3月31日 20時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)
高澤白(プロフ) - yuuki Sさん» 最後まで本当にありがとうございました…！何度もコメントくださってとても嬉しかったです。私のモチベでした( ᐪ ᐪ )♡寂しいと言われこちらも寂しくなってしまいました。終わらせるのが惜しいです。本当に最後までお付き合い頂きありがとうございました！ (2023年3月31日 19時) (レス) id: 4197b069bb (このIDを非表示/違反報告)
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