猫絵十兵衛～御伽草子～猫絵師と共にいるのは狐の妖 (ページ5)

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～猫参り④～ページ5

長屋に帰ってきた十兵衛は気分が沈んでいた

お津「十兵衛殿…」

ニ「よう、お帰りィ一杯やるか？」

十兵衛は何も言わず、布団に潜り込んだ

ニ「何でぇ機嫌悪ィな」
「だから満願成就の日には行くなって言っただろぃそう言う願立てだったんだからよ」
「仕方あるめぇ」

お津「ニタ公…その言い方は」

十「……」ガバッ

ニ/お津「うお!?/ひゃっ!?」

何を思い立ったのか十兵衛は急に起き上がると墨をすり始めた

ニ「何だい、いきなりお絵描きかい💧」
「俺ァ魂入れ手伝わねぇぞ」にょほほ

十「別に構わんさ」
「鼠退治の猫じゃねぇから」

翌朝、十兵衛はまだ寝込んでいる飯屋の店主の所へ行った

十「よう久蔵じいさんまだ寝込んでいるんだって？皆がじいさんの飯、食いたがってたぜ」

十兵衛は懐から巻物を取り出すと、それを放り投げた

十「それ！見舞いの品だぇ」

ゴンッと頭に当たった巻物がはらりと開く

十「またな」くくくっ

店「あいたた乱暴な猫絵屋だ」
「いってぇ何を…」

それに数滴の涙が零れたのは彼しか知らない

客「ようオヤジさん」

店「いらっしゃいまし！」

客「いつものヤツと酒、一本つけてくれ」

店「へいまいど〜」

客「おや、掛け軸かい？」

店「へぇ春風手白之図と言うヤツで」

客「へへぇ何とも気持ち良さげに猫がまどろんでいるねぇ」

～第一話完～