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こんな時間に誰だろう、と呟く親父さんの声を遮り、何度もしつこく鳴らされるインターホン。
そんなけたたましい音のせいか、はたまたもっと別の理由か。
突然私の袖を掴んで怯え始める景光を「大丈夫だ」と言って落ち着かせていると、正面に座っていたおじさんが「僕が出てくるよ」と呟いて、徐に席を立ち上がった。
そして一家を支えている大きな背中が、静かに玄関の向こうへと消えていく。
別に止める理由なんて無かった。
来客があれば確認しに行くのは当たり前のことだ。
……それなのに、この感覚は一体なんなのか。
親父さんはただ来客の応対に向かっただけなのに、得体もしれない不穏な感覚が、静かに背筋を這い上がってくる。
そして私は恐らく、この感じを知っている。
初めてこの感覚を味わったのは確か、前世で今くらいの年齢だった頃だ。
なんとなく存在が気に食わない。
そんなちっぽけな理由で私をいじめの標的にした奴らが、揃いも揃って纏っていたもの。
______人から人への、殺意を纏った空気だ。
「っ、Aちゃん!!どこいくの!!」
「ちょっとおやじさんのとこにいってくる。だいじょーぶだ、すぐもどってくるよ」
「い、いやだっ、いかないで、……っ、そばにいてよ、Aちゃん……っ」
「っ……」
……あぁ、そうか。
彼もまた、この嫌な空気を薄々感じ取っているのか。
確かにそう考えると、この異様な怯えようにも納得がいく。
子供は時として大人以上に、人の些細な感情に敏感だという。
初めて触れる人の悪意は、彼にとっては不気味で仕方がないだろう。
けれど私がここで景光の側にいる選択をしてしまったら、今度は彼の親父さんが危険に晒されてしまう可能性がある。
それだけは、こいつの為にも、こいつの家族の為にも、避けなければ。
「……ごめん、ひろみつ」
景光が掴んでいた腕を振り解いて、おじさんが向かっていった玄関を目指す。
どうやら来客はおじさんの知り合いなようで、玄関先には穏やかに談笑する声が反響していた。
けれどその穏やかさも、私の登場で一変する。
それはまさしく、私の足音に気づいて、おじさんが外に背を向けた瞬間のことで。
彼の背後では、振り上げられた包丁が廊下の明かりを反射して、鈍い光を放っていた。
「っ、おじさんよけろ!!!!」
______グサッ。
肉を割く生々しい音と共に、目の前には真っ赤な鮮血が飛び散っていた。
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あ(プロフ) - いつまでも続き待ってます。 (12月22日 23時) (レス) id: 2607c1000c (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 尊い、、、むり、、、これは尊すぎる好き (9月28日 1時) (レス) @page23 id: 0e552ce067 (このIDを非表示/違反報告)
雪見大福(プロフ) - 好きです!これからも無理せず頑張ってください!更新を楽しみにしてます (8月12日 15時) (レス) @page23 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
黒谷桃里(プロフ) - ウッッッッッ!!!!めちゃくちゃ好きです!!!!可愛い…… (7月11日 2時) (レス) id: eae39e15db (このIDを非表示/違反報告)
さくらこ(プロフ) - もう更新はしないのでしょうか? (5月18日 23時) (レス) @page23 id: cae0d8d8c8 (このIDを非表示/違反報告)
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