検索窓
今日:6 hit、昨日:131 hit、合計:179,434 hit

ページ20










こんな時間に誰だろう、と呟く親父さんの声を遮り、何度もしつこく鳴らされるインターホン。



そんなけたたましい音のせいか、はたまたもっと別の理由か。


突然私の袖を掴んで怯え始める景光を「大丈夫だ」と言って落ち着かせていると、正面に座っていたおじさんが「僕が出てくるよ」と呟いて、徐に席を立ち上がった。




そして一家を支えている大きな背中が、静かに玄関の向こうへと消えていく。



別に止める理由なんて無かった。

来客があれば確認しに行くのは当たり前のことだ。





……それなのに、この感覚は一体なんなのか。



親父さんはただ来客の応対に向かっただけなのに、得体もしれない不穏な感覚が、静かに背筋を這い上がってくる。





そして私は恐らく、この感じを知っている。





初めてこの感覚を味わったのは確か、前世で今くらいの年齢だった頃だ。


なんとなく存在が気に食わない。

そんなちっぽけな理由で私をいじめの標的にした奴らが、揃いも揃って纏っていたもの。





______人から人への、殺意を纏った空気だ。








「っ、Aちゃん!!どこいくの!!」



「ちょっとおやじさんのとこにいってくる。だいじょーぶだ、すぐもどってくるよ」




「い、いやだっ、いかないで、……っ、そばにいてよ、Aちゃん……っ」



「っ……」









……あぁ、そうか。


彼もまた、この嫌な空気を薄々感じ取っているのか。




確かにそう考えると、この異様な怯えようにも納得がいく。






子供は時として大人以上に、人の些細な感情に敏感だという。


初めて触れる人の悪意は、彼にとっては不気味で仕方がないだろう。




けれど私がここで景光の側にいる選択をしてしまったら、今度は彼の親父さんが危険に晒されてしまう可能性がある。



それだけは、こいつの為にも、こいつの家族の為にも、避けなければ。









「……ごめん、ひろみつ」









景光が掴んでいた腕を振り解いて、おじさんが向かっていった玄関を目指す。



どうやら来客はおじさんの知り合いなようで、玄関先には穏やかに談笑する声が反響していた。





けれどその穏やかさも、私の登場で一変する。


それはまさしく、私の足音に気づいて、おじさんが外に背を向けた瞬間のことで。




彼の背後では、振り上げられた包丁が廊下の明かりを反射して、鈍い光を放っていた。









「っ、おじさんよけろ!!!!」








______グサッ。



肉を割く生々しい音と共に、目の前には真っ赤な鮮血が飛び散っていた。








*→←*



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (622 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1868人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

(プロフ) - いつまでも続き待ってます。 (12月22日 23時) (レス) id: 2607c1000c (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 尊い、、、むり、、、これは尊すぎる好き (9月28日 1時) (レス) @page23 id: 0e552ce067 (このIDを非表示/違反報告)
雪見大福(プロフ) - 好きです!これからも無理せず頑張ってください!更新を楽しみにしてます (8月12日 15時) (レス) @page23 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
黒谷桃里(プロフ) - ウッッッッッ!!!!めちゃくちゃ好きです!!!!可愛い…… (7月11日 2時) (レス) id: eae39e15db (このIDを非表示/違反報告)
さくらこ(プロフ) - もう更新はしないのでしょうか? (5月18日 23時) (レス) @page23 id: cae0d8d8c8 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:無糖 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2022年6月26日 16時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。