漢らしさ100lvの悪女様【wrwrd】

eight page 青視点 ページ8

ふわりと笑った彼女は、昨日まで自分に言い寄って来ていた女の子とはまるで別人だった。
先ほどから彼女の言動には驚かされる。

最初こそ本気で煙草を黙っている代わりに付き合えとか、オモチャとかで遊ばれるのかと不安だった。

でも彼女はいつもの媚びた猫撫で声でも、脅す様な口調でもなく、まるで男の様な喋り方で、あたかも吸ったことがあるかの様に煙草を一本、絆創膏を対価に要求してくるのだ。どうすればいいか全然分からず何も言えずにいたら、諦めた様に踵を返された。

先生にチクられると恐れた俺は煙草を差し出した。こんなことで生徒会に支障が出たらグルちゃん達に迷惑になる。
それだけは避けねばと必死に考えた。無言の時間が苦しかった。でもそんな時間は、彼女の『私の何がそんなに怖い？』という問いで地獄に落とされた気分だった。

これ下手こいたら死ぬタイプの質問だ。
そう分かっていながら、どこか雰囲気の違う彼女に、悪い癖が出てしまった。賭けたのだ。彼女が変わっていると言うことに、噂が嘘と言うことに賭けて、本音を少し漏らしてみた。

すると彼女は機嫌を悪くするどころか申し訳なさそうに頬を掻いて、一言

「怖がらしてわるかったな。安心しろ、私はそんなことしねえから」

なんて言うものだから、それに合わせて僕の頭まだ撫でてくるものだから、その撫で方が、あまりにも雑で、強くて、少し痛いけど、どこか安心できる様なそれだから…ついでにボサボサになった僕を見てふわふわと笑うものだから、どうしても彼女が昨日の彼女と同一人物とは思えなかったのだ。
そんな思考からぽつりと漏れたのは

「…変わったね」

と言う短い言葉、ハッとしてすぐに口を塞いだがもう遅い、音速というのはとびっきり早いものだから、もう彼女の耳に届いていた。

「はは、そうだな、改めて自己紹介でもしようか。
私は剣夜A、お前は？」

「え、あ、僕は鬱やで、知ってると思うけど…」

「いいじゃねえか！ところで煙草は一本貰えるのか？」

「ん、いいよ、キャスだけどいい？」

「なんでもいい、吸えんなら」

苦手だった彼女が、とても接しやすい距離を保って隣で煙草を燻らせる。人差し指と中指に挟んで吸う姿はとてもじゃないが初心者とは言えない、寧ろ美しささえ孕んでいた。

「けほ、げっほ！けはっ！！」

「や、やっぱやめといたほうが」

「ヤニがまじいなんて腐った舌になった…」

美味いと思うまで吸ってやると意気込む彼女を見て、頬が綻びた。

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