明晰夢 【短編集】

… ページ44

さっき、福良さんとAさんが一緒にどこかへ行った。どこに行くか聞けなかった。聞けるわけないだろう、Aさんのあんな幸せそうな顔を見たのは初めてだったんだから。

なぁ、それは、俺じゃダメだったのかな。


ああ、そんなことより、仕事しないと。



こんなんで、捗るわけないけど。




「あー…疲れた。」




その時、コンコンと音がした。


「ん？」

『失礼しまーす』

なんだ、改まって。

「なにそれ、いつもそんなんじゃないのに」

乾いた笑いしか出ない。
原因はAにあるって、知ってる？
知らないか。

『伊沢さん、前向いててください。』

…え？

『い、いいから。』

「ん…？」

後ろからよしっという可愛らしい声が聞こえた。

『じ、じっとしててくださいね…』

何をされるのだろうか。

すると、ふわっと良い匂いがした。

それは、彼女とすれ違った時に香る匂いと同じで。

俺の体の前に、彼女の手が回ってきた。

「っえ、な、なに？どうした？おい、ねぇ？」

動揺して、おかしな文になってしまった。だって、動揺するに決まってるだろ、好きな人に抱きしめられたら、慌てるものじゃないのか。
本当なら、俺も抱き締め返したい。
今すぐ、俺の腕の中に。


でも、勘違いだったらどうする？


もし、

何かの間違いだったら、

どうする。


頭が働かない。


クイズ王のはずなのに。



でも、


好きな子から抱きしめられた時の対処法なんて


どこにも載ってなかったじゃないか。


俺はどうするのが正解なんだよ。



やっと動いた体は、正直で、

すぐに彼女の方を向いてしまった。


しまった。


きっと今の俺の顔は


とてつもなく赤い。


『…ありがとうございました。』


ぱっと離された。





ねぇ、どうしてハグしたの？

ねぇ、それは俺じゃなくてもよかったの？

それとも、俺じゃないといけなかったの？

もしいけなかったなら、

それは俺がよかったってことでもいいの？



ねぇ、これは勘違いしてもいいの？





わからない。




ねえ、Aさんの気持ちがわからないよ。






ーー

作者です(約4回目)
本当はあまあまにしたかった。
したかったんです。
出来なかったんですごめんなさい。
ほんとに失敗です。改良点なんて塵ほど出てきます。指摘は沢山来るだろうなと思っています。反省です。
次は…頑張ります…

ーー

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