Agapanthus (ページ47)

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その後何テイクも撮り直しをして、見事に撮影時間は押していた。

だけど他のテイクで巻き返して、予定調和をしていくと監督は満足気に僕らを褒めて今日の撮影は終了となった。

mn｢今日の撮影盛り上がってたね。｣

｢うん。ちょっと仲良くなれた気がした。｣

mn｢ふふ、よかったね。｣

次はCMの撮影だっけ。

mn｢相手の俳優さん、最近売り出し中の若手俳優さんだから。｣

僕と一緒にお菓子のプロモーションをするのがその俳優さん。

歳は僕より4歳年上の21歳。

mn｢まあうちのAが負けるわけないけど？食われないようにね。｣

｢CMで食うも食われるもないでしょ……｣

mn｢今若い子の人気を総ナメ！とかの見出し、彼も持ってるから事務所がピリピリしてんのよ。今回の共演も社長が直々に承諾したし。｣

｢……わかったよ、最善を尽くす。｣

自分だって、人気商売なのは分かってる。

ただ楽しく芝居をやればよかったあの頃と少し違う。

大人たちに利用されてることに気づかなかったあの頃とは、違う。

撮影現場に着くとやけに多いスタッフたち。

マネヌナ曰く、今回のCMを放映するテレビ局のニュース班も来ているらしい。

ちょっと緊張。

事務所同士がやりあってる感じがプンプンしてて、やっぱり社会は厳しい……。

ふと、カバンの中を漁る。

取り出したのは香水。

シュッと吹きかけると、好きな香りに包まれて心が落ち着く。

このとき僕は珍しく緊張していたことを自覚する。

｢……。｣

大丈夫。

僕はいつだって上手くやれてる。

｢おはようございます。｣

握手も交して、ちゃんと話せてる。

『Aさん、いい匂いですね。もしかしてあのCMの香水ですか？』

｢はい。大好きな香りです。｣

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