つまんない ページ32
大嫌いな夏がきた。
小学校最後の夏休みは、お盆休み以外、ほとんどピアノを弾いてた。
新一との約束のために頑張る私は、やっぱり単純。
前よりピアノに熱を注ぐようになった私を見て、お父さんがグランドピアノを買ってくれた。
書斎に置かれたピアノにもたれながら、うとうとする。
あいかわらず蝉の声はうるさいし蒸し暑いけど、黒いピアノが冷たくて気持ちよかった。
あと少しで夏休み終わるなぁ、とか考えながら、うつらうつら舟を漕いでたら、コンコン、と扉がノックされた。
「……はぁい」
「A?」
ガチャ、と扉が開く。
お母さんだ。
「どうしたの?」
「和花ちゃんから電話よ」
「和花ちゃん?……今行く」
体を起こして一階に降りる。
テーブルの上に受話器が置かれていた。
取って出る。
「もしもし?」
『あ!Aちゃん久しぶりー!』
「久しぶり、どうしたの?」
『Aちゃん、暇な日ない?』
「暇な日?どうして?」
『せっかくの夏休みじゃない、遊びましょ!』
「うーん……ちょっと待ってね」
カレンダーをみて予定を確認する。
一週間後にピアノの発表会。
それまでは毎日練習。
発表会がおわったら、すぐに新学期が始まる。
……ないなぁ、暇な日。
「和花ちゃんごめん、始業式まで予定があるの」
『予定?ずっと?』
「うん、ピアノがあって……」
『そっか……』
「誘ってくれたのに、ごめんね」
『ううん、仕方ないよ。でもさ、』
「でも?」
『Aちゃん、ピアノばっかりだね』
「……うん……」
『ピアノ好きなのはわかるけど、ちょっと、つまんないな』
「……」
息が詰まった。
私、つまんないって思われてるんだ。
「……ごめん……」
『いいよ、じゃあまた学校でね』
ブツっときれた通話。
ツーツー、という音が頭に響く。
つまんないって言われちゃった。
夏休み中、新一や蘭ちゃんの誘いも大体断ってきた。
もしかして、二人にもつまんないって思われてる?
そういえば、二人から遊ぼうって言われなくなった。諦められてるんだ。
Aちゃんは誘っても遊んでくれないから、って。
どうしよう。
馬鹿だ、わたし。
ひとつのことに集中しすぎて、他のことが見れてなかった。
友達関係とか、おろそかにしてた。
ちりんちりーん。
遠くで風鈴の音が聞こえた。
心が冷えていく。
あれ?もしかして、今の私って。
ひとりに、なりかけてる?
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極・吹雪姫 - ちょっとびっくりしたのが、弟の瑞紀(みずき)と私の「ミズキ」が被ったことだわね。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
極・吹雪姫 - ごめんなさい、本当に途中で泣きそうになったわ。「泣く」ですわ。泣いたページ。 (2019年5月2日 20時) (レス) id: c4455a25af (このIDを非表示/違反報告)
紅葉(プロフ) - こいつらまだ小学生だった…!なんつー濃い恋愛を…!この小説すごく好きです!遥樹くんのちょっとした嫉妬がこぼれて、それを見てとても切なくなる。ヒロインの気持ちはよく理解できるけど、やっぱり遥樹くんがいちばん好きです! (2019年3月11日 10時) (レス) id: 7ac5223945 (このIDを非表示/違反報告)
松野かほ(プロフ) - 遥樹くんの読み方を今初めて知った← (2019年2月13日 15時) (レス) id: 45fd1e6358 (このIDを非表示/違反報告)
みお - この小説好きです!正直言うと新一より遥樹くんの方が好きだったのでくっついて欲しかったなぁって思ってます() (2018年6月8日 19時) (レス) id: 0646f7c2e0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みやの | 作成日時:2018年3月1日 22時