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タイミング悪く運ばれてきたフルーツ。
店員は結城の前にそれを置いたあと、チラっと俺を見た。
……分かってるよ。

「わぁ、美味しそう。私パイン好きなんです」

自らの手で擦った目元は、ほんの少し化粧が剥がれ落ちている。
各務にだったら「化けの皮が剥がれてんぞ」って冗談を言えるのに、いつもだったら結城にも言えるのに、この雰囲気で流石にそれは言えない。

「二宮さん、どれが好きですか〜?」

さっきまでが嘘のように、いつものように結城は笑顔でそう言った。
……その元気系な振りが、今はキツイ。

「……その中で一番原価が安いモノ」
「は?」
「パインかな」

ひょいっとパインを盗んで、「あっ」って言う結城を視界に感じながら口に入れた。
甘い。

「パインがぁ」
「まだあるでしょうよ」
「舌が痛くなるまで食べるのが好きなんです」
「変な趣味をお持ちだこと」
「原価が安い果物が好きって言う二宮さんに言われたくないです」
「高級なモンが苦手なだけです」
「安上りな人ですね」
「旦那にするならもってこいよ」

ふと、結城のフォークが止まった。
あぁ、俺はまた。
「俺の彼女にでもなってくれんの?」に次ぐ、バカな発言を。

「二宮さん旦那にしたら大変そう」
「はぁ?」
「好き嫌いが多そう」
「……当たり」
「前ゲーム好きって言ってましたよね。ご飯よりゲームって感じで、毎食ムカつきそう」
「……」
「せっかく美味しく作っても、美味しく食べてくれる人じゃないと嫌だなぁ」

……悪かったね、櫻井さんみたいなグルメじゃなくて。

「安上りとかどうでもいいんですよねぇ。結婚は幸せをいくら共有出来るかだと思ってます」
「……」
「綺麗な景色を見て綺麗だねって。楽しい場所に行って楽しいねって。もちろんご飯も」
「……」
「私はそんな人と付き合いたいし、結婚したいです」

俺、何を聞いてるんだろう。
結城の言う理想の人物像は、まるで俺と違った。
出不精で、食事は食べれれば何でもいい。
俺は何を期待していたんだ。
やっぱり、バカを見たんだ。

「でもね、そんなのどうでもいいって思っちゃったんです」
「え?」
「それは、私のすぐ近くに、誰かの幸せを真剣に願える人がいたから」
「……」
「そんな優しい気持ちを持ってる人の方が、カッコいいって感じたんです」
「それは、」
「……二宮さん、のことだったりして」

そう言って、結城は残り一つのパインを頬張った。

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cori(プロフ) - mayuさん» mayuさんありがとうございます!マキちゃんみたいな後輩欲しい…分かります!優しくてお茶目で自分のこと大好きな後輩とか最高ですよね、願望を詰め込みました笑 ハッピーになっていただけて本当良かったです♪ (2019年6月19日 23時) (レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
mayu(プロフ) - マキちゃーん!天邪鬼な二宮くんと上手く行って良かったー!もうマキちゃん可愛すぎて大好きです!!私もマキちゃんみたいな後輩が欲しい…(笑)完結おめでとうございます!読んでいてとてもハッピーになるお話でした!! (2019年6月19日 0時) (レス) id: 862aa3f0aa (このIDを非表示/違反報告)
cori(プロフ) - ともさん» いつもありがとうございます(*^^*)そうなんです、2人ともそういう価値観同じなので付き合うのも必然かなーと! short storysの方でまた何やかんやしてる2人を書けたらと思うのでぜひまた見に来てください! (2019年6月18日 21時) (レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
cori(プロフ) - すりおろし梨。さん» こちらこそありがとうございます!!マキちゃんハムスターって言うの、凄く分かります!必死に回し車回してそう笑 この2人の先々は愛は二度目からのshort storysの方で少し話す可能性あるので、もし良かったらそちら読んでいただけると嬉しいです(*^^*) (2019年6月18日 21時) (レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 完結お疲れ様でした!天邪鬼の二宮さんが本気で部長カップルを応援し…そして同じ思考のマキちゃんに必然?に恋をして結ばれた。とっても素敵なお話で甘々な二宮さんにニマニマしちゃいました(笑) (2019年6月18日 9時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:cori | 作成日時:2019年5月23日 21時

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