＊ ページ12
凍てつくような声に、ザッザッと地面の砂を這うような足音。
急にクリアになった視界の先には、きっちり折り目が付けられている細身のスーツ。
……自分が何をしてしまったのか、瞬時に理解出来てしまった。
私は、ここで、部長を求めた。
……翔平くんを、部長と勘違いして。
「甲斐、みんな二次会のカラオケに向かってるぞ」
「……分かりました。……部長は行かないんですか？」
「あぁ、結城にも伝えてある。それも連れて帰るって」
それ、っていうのは私なんだろう。
それって、それなんて言わないで部長、私をそんな風に……
「Aさん、だいぶ酔ってますね」
「あぁ、飲みすぎんなよっていつも言ってんのに。誰に飲まされたんだか」
部長の言葉の棘がどんどん私に刺さる。
怖い、怖いよ。
部長の方向けない。
「……謝りませんよ、部長」
「……」
「気付いてらっしゃると思いますけど。僕は、Aさんのこと好きなんで」
翔平くんに、好きって言われた。
心の中では気付いていて、でも本気じゃないと思った。
だから、のらりくらりと否定をし続けていた。
……今だって、大事なことを言われているって分かっているのに。
頭の中は、どうやって部長に弁解をしようか、それでいっぱいだ。
「へぇ」
「へぇって部長、僕は」
「分かった分かった。覚えとくよ」
「部長！」
「こいつに好きって言われた時は教えてくれ。その時思い出すから」
「……随分自信があるんですね」
「自信？」
ハッて、バカにしたような乾いた音が聞こえた。
まだ、怖い、部長の方を向けない。
「自信なんかないよ」
「でも」
「自信はないけど、お前に怯える必要もないだろ？」
「……」
「不必要なことに時間を使いたくないだけ。悪いね、コイツの面倒見てもらって。帰るぞ」
ザッザッともう一度同じ音が聞こえて、部長が私の腕を掴んだ。
あぁ、やっぱり違う。
さっき掴まれた手とは、ぬくもりも手の厚さも何もかも違うのに、どうして私は。
「帰るぞ」
優しい声がして、ようやく部長の方を向くとその声に合う、優しい顔をしていた。
……怒ってない？
「タクシー呼んでおいたから。……あ、来た。乗るぞ」
翔平くんに「気を付けて」と言葉を残し、私は奥に詰め込まれた。
発車した車内のミラーから翔平くんが遠ざかる様子が見えて、何とも言えない気分になる。
……いつも車内で繋いでくれる手は、離れたままだ。
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cori(プロフ) - いくさん» いくさんコメントありがとうございます！はい、ついに！ぜひぜひ移行先でもお待ちしてます♪ (2019年9月8日 0時) (
レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
いく(プロフ) - キュンキュンして、毎回楽しみにしてました。ついに部長のおウチに行くんですね！！続きのぞいてきます！ (2019年9月7日 23時) (レス) id: bf142477e0 (このIDを非表示/違反報告)
cori(プロフ) - mayuさん» mayuさんありがとうございます！お父さんも部長も各務ちゃんを深くあいしてるからこその言葉ですね(^ ^)どんなプロポーズなんでしょうね…！でもそれを書くときはこのお話の本当の完結なんですよね、寂しくなります（ ; ; ） (2019年8月14日 7時) (レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
mayu(プロフ) - わーー(泣)お父さんの想いにも泣けるし、部長の想いと優しさにも泣けました…(TT)どんなプロポーズしてくれるのか楽しみです！！更新ありがとうございます！(^^) (2019年8月12日 14時) (レス) id: 862aa3f0aa (このIDを非表示/違反報告)
cori(プロフ) - mayuさん» mayuさん、こちらにもありがとうございます！部長の変態度がだんだん皆さんにバレてきています笑 本当ラブラブすぎてこちらが胸焼けしそうです…こちらこそいつもありがとうございます(^○^) (2019年7月19日 9時) (レス) id: d86fdce482 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：cori
| 作成日時：2019年6月13日 18時
