【小説】魔女達の魔導書記録 (ページ4)

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【Episode 3】humming【フレア】ページ4

「フレア姉、発表が始まるぜ」

興奮が溢れんばかりの声で、ワタシの弟、シルヴァが言った。

「そうね、シルヴァと同じだったらいいわね」

自分で言って初めて、ワタシ自身も興奮している事に気付いたわ。少しでも落ち着かせるために鼻歌を歌ったけれど、いつもより音程が高くなってしまう。

静粛に、の声でやめざるを得なかったわ。興奮は収まらず、�茲が火照っている。それはシルヴァも同じ。

隊発表の女性の声は、とても美しかった。今度コーラスに誘ってみようかしら。

「っあ、フレア姉と離れた……」

掲示板を見ると、シルヴァのいる隊にワタシの名前は無かった。悔しそうにシルヴァは言う。

「ワタシは……隊長……？」

何度も名前を確認する。けれど、「フレア・セイレーン」の文字は隊長と書かれた文字のすぐ横にあった。何かの間違いよ、誰かにそう言って欲しかった。

先ほどの興奮は一気に冷め、謎の恐怖が体を駆け巡る。もし隊務に失敗したら？隊員の命が消えたら？ワタシはどうなるか分からない。もしかしたら、一生シルヴァとも会えないかもしれない。

「フレア姉…？」

心配した顔でシルヴァがワタシを覗き込むようにして言う。いけない、心配かけてしまったかしら。

「あら、何かしら？……行きましょう、他の魔導士も移動し始めてる」

必死に笑顔を作って、ワタシはシルヴァを移動へと促した。シルヴァは急に、今にも泣き出しそうな顔になる。

「フレア姉と離れても、俺らは2人で1つだから！」

あぁ、そうだったわ、2人で1つ。小さい頃に約束したものね、離れても繋がってる、2人で1つだって。本当にその通りよね、こうして再開できてるんだから。

「えぇ、そうね。お互い頑張りましょう！」

シルヴァの頭を撫でて、ワタシは指定の場所に歩き出した。

恐怖はあったけれど、ワタシなりに頑張っていくつもりよ。例え何かあっても、ワタシはワタシで解決するわ。

humming……鼻歌を歌う。その音とブーツの鳴らす規則正しい音が心地よい。ワタシはこの「歌」が武器。頑張らないと。

シルヴァは大丈夫かしら？ちゃんとお友達いるのかしら、嫌われないかな、いじめられて一人で泣いてたらどうしよう！

…なんて、数分前に別れた弟のことを心配するなんて…ワタシも随分な弟好きね。ウザがられてないかしら、こんな姉でごめんなさいね。…弟離れ、そろそろしなきゃ。