誰かさんの落し物（R.N） (ページ17)

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部屋に着き、視界に広がる真っ暗な部屋に

いつもはひどく孤独を感じるけど

なぜか今日はそんなこともなかった。

雨に打たれたせいか、髪の毛も服もぐちゃぐちゃでその日はすぐにお風呂に入った。

上がって髪の毛を乾かしていると

カバンの中から聞きなれない携帯の着信音。

不思議に思ってカバンを確認すると

先程拾った携帯がまだ私のカバンの中に入っていた。

やっちゃった、、

恐る恐る通話ボタンを押して耳に当てると

さっきまで聞いていた声が聞こえる。

「あっ、もしもし？永瀬です。それ俺の携帯やねんけど、、(笑)」

「ごめんなさいっ、、完全に返すの忘れてた」

聞くと、永瀬さんは携帯２台持ちらしく

今もその携帯でかけているようだった。

「いいよ？また会える口実やん」

「上手いこと言いますね～」

ハハハッと永瀬さんは電話の向こうで笑っていたが

そんな少しの言葉でまた私は心臓が大きくなる。

「普通に寝れそう？」

「ほんとにもう平気ですよ！」

「心配やし家入り込んだったらよかった～」

「チャラいな！(笑)」

「チャラいんちゃう！心配してんの！(笑)」

「はいはい、、」

５分ほど会話していたが

永瀬さんはずっとそんな調子でふざけていた。

私の弱みにつけこんで部屋に入ろうとすることは簡単にできたはずなのに

それをしなかったのは永瀬さんの優しさなのか

それとも真面目な性格だからなのか

それとも

簡単に近付くことができない存在だからなのか

出会ったばかりの私にはまだ分からなかった。

５分ほど話して最後に永瀬さんが

「嫌なこととか不安なことあったらまた俺の携帯からかけておいでな」

と言ってくれた。

「はい、ありがとうございます」

「ほな、ゆっくり寝えや。おやすみ」

「おやすみ、、なさい」

電話を切りベッドに倒れこむ。

そのまま暗くなった永瀬さんの携帯をしばらく見つめ、電源ボタンを押した。

「電話してこいって、、ロックかかってんじゃん」

小さく笑ってそのまま眠りについた。

会える口実とか言って、返す日は指定しないんだ。

なんて、少し残念に思ったことには

自分でも気付かないフリをしながら。