第55訓 京の都に咲く椿 ページ9
「くっそ遠かったわ」
汽車を降りると、江戸とはまた違う賑わいを見せる都が広がっていた。
お相手から送られてきた振袖は荷物を持って歩くにはかなり不便だった。
「一回着てみたかったのは確かだけど、動きづらすぎて敵わんわこれは」
「お嬢さんよろしければ荷物でも」
「あ、結構ですこう見えて力持ちなんで」
優雅な京男達は確かに見た目に美しいがぶっちゃけあまり好みじゃない。戦えなさそうだなぁとか思ってしまう。
荘厳な振袖が目立つのか歩いている間にちらほら声をかけてくる遊び人風の男達が少し面倒になって人の少なそうな路地を選んで屋敷を目指す。
「はぁ、江戸に帰りたいな」
表路地より庶民らしい格好が多い裏路地を見ると活気のある江戸の城下町みたいだ
「ん?」
「……んぐんー!!」
キョロキョロと周りを見渡していた時、かなり細い家と家の隙間の路地に何かが蠢くのを見た。
かすかに口を塞がれているらしい声も聞こえる。
えー、遅れたらやばいけど気になるなぁ。
ちょっと覗いてみるだけ、ちょっとだけ。
完全に光の通らない暗がりに足をすすめると
「おい、あっち行け女。痛い目に遭いたいか?」
結果として好奇心が面倒事に巻き込まれに行ってしまったのは一目瞭然だった。
「その子は?」
男たちの中心にいたのは、小さな女の子だった。
「関係ないだろ首突っ込むな」
「人攫いか」
「まぁ、俺たちが何でも見られたら返す訳にはいかねぇから。姉ちゃんは美人だし売っ払ってやるよ」
肝が据わってる子だ。暴れた形跡は見えるけど泣いたり怯えたりしている様子がない。
着いて早々やらかしてしまった。ため息をつきながら荷物の中から刀を取り出す。
「残念ながら私、もう買い手がいるので」
「買い手が居ようが関係ないね」
狭いのは好都合だ、1人ずつしか襲ってくる隙間がない。
真っ先に斬りかかってきた男の顔を鞘の先端で突く。
「あ、ごめん鼻に入っちゃった。この着物もらいもんだからさ返り血で汚すわけにはいかないのよ」
「こんのクソアマが」
「おーすごい教科書通りのザコ言葉」
今伸した男も合わせると4人。人攫いにしては大掛かりだが、ゆっくり考察する暇は与えてくれないらしい。
残り3人のうち1人が室外機を蹴り上げて上から斬りかかってくる。
「狭いところを縦に動くのはいいね灰元がやりそう」
剣身を鞘で横にいなしてからガラ空きの腹にグーパンをキメる。
「う、ぐぅ」
「ほらほら、遅刻したらやばいから早くかかってきて」
あれ、転がった2人の上に立って笑う私の方がなんか悪役っぽい?
第56訓 遅延証明書って欲しい時に限ってもらえない→←続キャラ紹介 主人公達を支える陰の英雄
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作者名:愛総 | 作者ホームページ:https://twitter.com/iso_0708/status/1468333379636834307?s=21
作成日時:2021年8月27日 20時