第69訓 そして時の流れはまた一つの川へ ページ23
"分かったか、もう何処にも行かせねぇ。隠し事もさせねぇ。頭の中まで全部俺のものだって前にも言ったろ。A。好きなんかじゃ足りねーよ。絶対逃さねぇ"
半日にも及ぶ行為の後で息が上がり、もやのかかる耳元に総悟の熱のこもった声が聞こえる。低く、重く執着する声。
「う……ん」
そう返事するのが精一杯で繋ぎ止めていた意識をそこで手放した。
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どのくらい寝ただろうか。重い瞼をゆるりとあけると、総悟が隣で何やら資料を読んでいた。
珍しく見せる真面目な眼差しをぼーっと見つめていると、こちらに気がつく。
一瞬にして真剣な赤い瞳がトロリと甘い色に変わった
「A、水飲んで」
普段とは違う優しい声色と触れるだけのキスが降ってくる。
ゆっくり傾けられたグラスで喉が潤された。
「も、おこってない?」
「ふっ、怒ってねーよ」
子供にする様に優しく頭を撫でつけられ、また瞼が重くなる。
「もうちと寝てな」
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「うー、腰痛い」
腰ともう一つうなじに痛みが走る。
起きてすぐ時計を確認しようと周りを見渡したが、確かにおいたはずの時計がない。
息が詰まる感覚がしてスマホを探すが、それすらない。
みれば体は綺麗に整えられて大きなパーカーを着せられている。
たまに総悟がダル着として使っていたやつだろう少し匂いが残ってる。
しかし、当の本人は居ない。少し隙間を開けて廊下を覗き見ると
「あぁ、副隊長起きました?」
「深尾、今何時?」
「2時半ですよ。沖田隊長ならさっき稽古を終えて今風呂入ってます」
「そう」
「はい、ここ座ってください」
深尾は自分の横をトントンと叩く。
私がみんなが来るまでずっと椿の木を眺めていた縁側だ。
「秋山さんと灰元がお茶を持ってくるそうなので」
どうやら待っててくれたらしい。
深尾は手入れしていた刀を鞘に戻すと、何やらスマホをいじっている。
多分私の起床を知らせてるのだろう。
「あっ、Aさーん。洋服もお似合いですね」
「高木は相変わらずだね」
ゾロゾロと1番隊の面々が集まってきて、私がいない間の出来事をワイワイ話し始めた。
「はい、お茶入りました」
「Aさんの好きなお茶菓子も作っておきましたよ」
縁側に流石に10数人座れず中庭に立ってる奴らがいるから立食パーティみたいになってる。
「あ、そうだみんなに渡すものが」
第70話 お菓子をご飯の代わりにするのは子供の頃の憧れ→←第68訓 冬に降る真実
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作者名:愛総 | 作者ホームページ:https://twitter.com/iso_0708/status/1468333379636834307?s=21
作成日時:2021年8月27日 20時