真選組血風帳弍【沖田総悟】 (ページ20)

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第66訓京に真選組ありページ20

かつて侍たちが仰ぎ夢を見た江戸の空、同じ様に夢を追いかけ成り上がった真選組という侍が居たそうな。

そして、今

「俺たち芋侍が帝お抱えになるとはなぁ」

「さぁ、早く行きましょうAちゃんが待ってます。それに副長が今にも爆発しそうです」

大掃除や準備、お世話になった家政婦に礼を告げて真選組はあの森の館を立った。

Aの連絡から1週間後の出来事。
京都に着いたのはバレンタインデーの事だった。

「トシ、気がせるのはわかるが天子様への謁見が先だぞ」

「わかってる。俺よりも総悟に言ってくれ」

「総悟もだぞ、その殺気抑えろよ」

「出してやせんよそんなの」

散々な年末ぶりにAに会うと言うことで沖田の怒りゲージは振り切っている。
が、近藤の心配をよそに謁見は問題なく進んだ。

「時折、私用を頼む事があるかも知れん。その代わり我も支援者集めに尽力しよう」

この乱世では天子の身も盤石とはいかないらしい。

「精一杯務めさせて頂きます」

「もちろん、本分は新政府に立ち向かう事だろうから準備が整えばいつでも京を立って構わんよ」

「御心遣いに感謝します」

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「ここで茂茂公は亡くなったんだな……」

滞在先に着くと一同は門を潜りすぐに黙祷した。
そして目を開けるとそこには

「ただいま」

新たな場所で迎える側だが、それは紛れもなく"ただいま"の場面だった。

「A！」

天子の御所を出る際に謁見してきたため正装、まさにあの日出ていった時の振袖で玄関に佇むAがいた。

土方や、近藤も隊士達も何度も名前を呼びながら押し寄せてくる。

ひとしきり泣いたり怒ったり笑ったりし終わると、誰かが気を使うように「荷物運ぼうぜ」と言い出し皆そそくさと消えていった。

「A、後で説教」

「兄ちゃん、ほどほどでお願いします」

「お茶とお菓子準備しとくんで若瀬の部屋集合で！」

「おい、俺の部屋かよ。まあいいけど。待ってますよ」

「うん。遅かったら先始めてて」

肩を叩いて順繰りに奥へ消えていく。
最後に近藤はAのことをガバリと抱きしめた。

「まずは局長として、部下に向けて言うなら。本当にありがとう助かったよ。そして兄貴分としてAちゃんに一言。次やったら怒る」

「ごめんなさい」

近藤は振り向いてチラリと沖田を見やると、ちゃんと話し合えよ、と言い残して隊士達の後を追いかけた。

遠くの方で部屋割りを発表するぞ！と言う声

「総悟？」

「お前の部屋は決まってんだろ案内しろよ」

「う、うん」

あの日と同じ感情の読めない紅がAを映していた。