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第60訓 不屈の刀 ページ14

Aが京都にきて1ヶ月と半。2月の頭。
京都には雪が降り積り、部屋の寒さと孤独がAの心を蝕んでいた。


本人も気がつかないうちに眠っている時間が長くなっている。体は異様に重く既に崩壊寸前だった。


そんな身も心も限界の一歩手前のある夜のこと。


あまりの寒さに目が覚めた深夜2時すぎ。
トイレに行こうと部屋を出ると大広間から漏れる一筋の光。


Aはそんなつもりはなかったが、職業病か無意識に忍び足で耳をそばだてていた。


「良い感じに弱って来たんじゃないか?」

「ええ、見てる限りではかなり憔悴している様です」


男と例の側近が晩酌でもしてるらしい。声が漏れ聞超えてくる。


「なぜあの女に?土方や沖田本人でも」

「土方の妹で、沖田の女だろ?こんなに絶好の嫌がらせはないじゃないか。
あーいう奴らは自分達が直接痛めつけられるよりも家族や恋人に手を出す方が堪えるのだよ」


何やら、真選組の話らしい。


「江戸で妻にやらせていたヤクの売買を真選組に潰されてからというものこの家は金欠でこの有様さ」


「ですが、真選組への出資は相当な額では?」


「手付金くらいは払ってやるさ、後々あの女を人質に金を取り返す。
そこまでセットで最高の嫌がらせだろ?
憔悴しきって壊れたあの女を手付金の倍額であいつらに返してやれば良い。
あいつらが妻にしたであろう仕打ちを考えれば足りないくらいだがね」


このままここで我慢していても、真選組に追加の援助はない……


Aの中でプツリと音がした。



「でも、契約を破っても大丈夫なのですか?一応松平公との取り決めでは」

「あんなのただの口約束だろ。証拠はどこにある。守る方が馬鹿というものだ」


Aの頭に男の笑い声がガンガンと響く。
広間の戸から踵を返すとAは迷う事なく物置へ向かった。

灰元から習った間取りの把握法で特段変わった屋敷でなければ大体の空間は把握できる。


「おかえり錆び付いてなくてよかった」

予想通りの場所に物置があり、取り上げられた刀も携帯もあった。


今度は音を隠す事なくドタドタと廊下を駆け抜ける。


「殺してやろうかクソ男」

「なっ、お前」


あっという間に広間の男を組み敷き首筋に刀を合わせる。Aがいくら弱っていてもひょろひょろの公家の男になんぞ負けるわけもなかった。


「ひぃ」


側近の男はAを見るなり顔を青くして逃げていく。


「あぁ、もっと早くこうしてればよかったんだ。ね?あんたもそう思うでしょ?」


Aは警察とは思えないほど狂気に満ちた顔で笑った。

第61訓 人を殴る奴は人に殴られる覚悟をしないといけない→←第59訓 憔悴



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設定タグ:沖田総悟 , 真選組 , 銀魂   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:愛総 | 作者ホームページ:https://twitter.com/iso_0708/status/1468333379636834307?s=21  
作成日時:2021年8月27日 20時

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