【d!】幽体離脱にご注意を

１６話．形勢逆転 ページ18

．






「力を貸し」






最後まで言い終わる前に飛びかかってくる

何度も言おうと奮闘しているが
攻撃速度が尋常じゃないので中々憑依できない






「(言わせろや！！)」






かといってトントンの方から
入り込むことは出来ないので見守るしかないのだ






シャ「がら空きやで」






胸ぐらを思い切り引き寄せられて
容赦なく顔面を殴られて後ろに突き飛ばされる






「女の子の顔ぶん殴るって神経やばいですよ」


シャ「勝負に女も男も関係ないねん」






ぼたぼたと鼻血が垂れて
口内が切れてしまったのか鉄錆の味が広がった






「(絶対に一発は食らわせる)」






勝ち負けとか最早どうでもよくなって
とにかくシャオロンに一発入れたくて仕方ない






「ぶっ飛ばす」


ト『物騒やな』






トントンを憑依させる前に
必ず同じように顔を殴ってやると心に決めた

一度深呼吸して剣を握り直すと踏み込んだ






シャ「お、来るか？」






にやっと口角を吊り上げて煽る

一気に前に出て距離を詰めると
剣を横に振るがいとも簡単に避けられてしまう






シャ「おいおーい、それしかでき」






近距離で煽ろうとしたが
余裕で気が緩んでいたところに蹴りが近付いた






シャ「(こいつ、さっきの俺のやつを！！)」






先程の攻撃をコピーしたかのような動き

シャオロンは回し蹴りを腕で庇うが
女の子にしては中々の威力に思わず足が絡まる






シャ「(やばい！！！)」






視界に映るのは笑顔で剣を振り被るAの姿






「ホームラン」






一切の手加減なく振り切られた剣は
シャオロンの側頭部を直撃して意識が混濁する






シャ「…へぇ、結構やるやん」






側頭部から血が垂れるが
気にせず垂れ流しにしたままAを見据える

しかし剣が直撃したのですぐには動けない






「(このときを待ってました)」






思い切り殴ったことにより
鞘にヒビが入ったのでやっと本体が抜けそうだ

そしてこっちも遅くなったが活躍してもらおう






ト『お、やっと出番か？』


「お願いします」






息を吐いて神経を集中させる






「トントンさん、力を貸してください」






水が浸透するような感覚がして
今までの疲れや痛みが全てどこかへ消え去った






ト『いくで相棒』


「はい、２人で勝ちましょう」






すらっと鞘から引き抜いた剣が反射して光る

微かに目の前で赤いマフラーが翻った






グ「…トントン？」

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