63_傘村折心【世界で救われたい】 ページ16
*
「――"嘘つき"とか言うけど、つまりキミは何が言いたいのかな?」
言いながら、部屋へ足を踏み入れる。その瞬間、二人の視線がオズの方を向いた。
「お、オズさん…?」
「や、ゆうきくん。急に走り去ってごめんね。…それでさ、エルイくん」
戸惑った様子で此方に視線を送ってくるゆうきくん。
そんな彼を落ち着けるように口角を上げて微笑み、それからエルイくんへ視線を移す。
すると彼は、ゆうきくんとは反して、まるで面白い物でも見るかのような眼差しを向けてきた。
「…何かな、オズくん」
「なんでそんなに余裕綽々なのか…なんて、野暮な質問はもはやしようとも思わないけどさ。
今朝から蔓延ってるこの重い空気…それを助長するような発言は、控えた方が良いと思うよ?」
お互いの為にも、と付け加える。
「お互いの為?どうして、それが互いの為になるのかな」
「どうしてって…考えてもみてよ。いつ、誰が、どんな行動を起こすのか。
それは普段から分からないもの。けれど、人は感情に左右される生き物だからね。
その行動が良くない方向に進む可能性が、高くなってしまうんじゃないかな?」
「そうかもね。でも、例えそうだとして、誰からしてもその『行動』が、必ずしも悪いものだと受け取られるとは限らない。…この意味、オズくんには分かるよね」
そう言って、彼は笑う。そんな彼を見つつ「一理あるね」と返しながら、思考する。
エルイくんだもんね。きっと暗くよどんだ雰囲気の方が、人の『醜い』部分が多く見られるとでも考えているんだろう。
「うん、やっぱりオズくんになら伝わるよね」
「そうだね。…けどさぁ、もう一ついい?」
そう切り出すと、エルイくんは笑みはそのままに首を傾げつつ、「どうぞ?」と一言。
「ありがとうね。…これは、完全にオズ個人の思想…というか、お願いでもあるんだけどさ」
そこで区切って、エルイくんに近寄る。背伸びして、彼の耳元で囁いた。
「――あんまり、彼をいじめないでほしいな」
そう言うと、エルイくんからずっと湛えていた笑みが失せた。でも、それは本当に一瞬の事で。
「あははっ、そっかぁ」
「うん、まあ…『ほしい』、というか。絶対、なんだけどね」
エルイくんはこれまで以上に、大きな声で笑っている。何が面白いのか、分からないけれど。
「心外だなぁ…因みに、その『絶対』の『お願い』を無視したら?」
笑いも落ち着いた時、エルイくんがふと聞いた。
「そうだね。その時は、キミの事…」
再び笑みを浮かべて、でも目元は緩めずに、言い切った。
「―――殺しちゃうかもね」
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ニャ助(プロフ) - 更新しました。こんなに短くてすみません(><) (2020年5月4日 11時) (レス) id: 636a33148d (このIDを非表示/違反報告)
ニャ助(プロフ) - お久しぶりです!最近更新出来ずすみません…!更新してきます! (2020年5月4日 10時) (レス) id: 636a33148d (このIDを非表示/違反報告)
(=゚ω゚=)にゃあ - 更新しました。 (2020年3月23日 15時) (レス) id: 91777e8ddd (このIDを非表示/違反報告)
(=゚ω゚=)にゃあ - 更新します。 (2020年3月23日 14時) (レス) id: 91777e8ddd (このIDを非表示/違反報告)
春雨(プロフ) - 更新しました!オズはまだ行く先決まってないので、使って話を進めてもらって構いません! (2020年3月21日 23時) (レス) id: 55d503be78 (このIDを非表示/違反報告)
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