63_続き ページ17
*
空気の流れが、止まった気がした。
「お、オズさん…?」
ゆうきくんが困惑を隠しきれない様子で、此方を見ている。
「……」
一方、言われた本人…エルイくんは瞠目する事もなく、黙ってオズの顔を見つめている。
「なんてね、冗談だよ。別に本気じゃないから。ただ、そのくらいやめてほしいんだって事、伝えたかっただけ」
そう言うと、エルイくんは困ったように笑った。
「まあ、嘘だろうね」
「あれ、分かるの?」
「ボクは人が嘘を吐く瞬間を何度も見ているからね。なんとなく違うとか、そうだとか分かる事があるんだよ。最も、君はあからさまだったしね」
「その『あからさま』とかいう基準が分からないから何とも言い難いけど…まあいいや」
その時、さっきまでの少々険悪な空気が軽くなっている事に気がつく。
「それじゃ、そろそろ行こうかな。ね、ゆうきくん」
「え?…あ、うん」
話についていけてない感じだったのに、急に声を掛けられたせいかゆうきくんは肩を揺らした。
「じゃ、エルイくん。お願い…いや、『約束』ね」
「…はいはい、守るとは言ってないけどね」呆れたように笑うエルイくん。
そんな彼の様子を見つつ出入口へ近付く。
部屋を出てから、行き先も特に無いのにゆうきくんと並んで歩いた。
「ねえ、そういえば…なんだけど」
少しして、ゆうきくんが口を開いた。
「『約束』って?さっき話してた事?」
「ん?うん」
「えっと…確認するけど、教えてはくれないよね?」
「当然じゃないか。だって、キミに聞かれたくない事だったから、わざわざキミに聞こえないようにしたんでしょ」
オズの言葉に、「そうだよね」と項垂れるゆうきくん。
「大袈裟だなあ。別に大した事じゃないって」
「でも…」
「気になるんだよね?平気平気、すぐ慣れるって」
「いやそういう問題じゃないし…慣れるとも、思えないんだけど」
「そうかな?」と首を傾げながら、こっそり思った。
この実は無駄だけど、どうしようもないくらいに楽しい時間が、ずっと続けばいいのに…ってさ。
…けど、そんな事考える前に、こんな事してるより先に。
もっとちゃんと、考えておくべきだったんだ。
『私の人格消えかけてる』
『それに、あいつ…おかしくなりかけてる』
昼食の前に、零くんが言っていた事。本人は「後から分かる」って、気にしなくてもいいみたいな事を言っていたけれど…
――それでもやっぱり、考えておくべきだったんだよ。
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ニャ助(プロフ) - 更新しました。こんなに短くてすみません(><) (2020年5月4日 11時) (レス) id: 636a33148d (このIDを非表示/違反報告)
ニャ助(プロフ) - お久しぶりです!最近更新出来ずすみません…!更新してきます! (2020年5月4日 10時) (レス) id: 636a33148d (このIDを非表示/違反報告)
(=゚ω゚=)にゃあ - 更新しました。 (2020年3月23日 15時) (レス) id: 91777e8ddd (このIDを非表示/違反報告)
(=゚ω゚=)にゃあ - 更新します。 (2020年3月23日 14時) (レス) id: 91777e8ddd (このIDを非表示/違反報告)
春雨(プロフ) - 更新しました!オズはまだ行く先決まってないので、使って話を進めてもらって構いません! (2020年3月21日 23時) (レス) id: 55d503be78 (このIDを非表示/違反報告)
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