59_傘村折心【世界で救われたい】 ページ12
「むー…?」
思わず不満げな声が口からこぼれ出る。何処を探してもゆうきくんが見つから無いんだよね。
「どこかで入れ違ってるのかな…?」
さっきからずっと廊下をあっちこっち行ったり来たりで、ちょっと疲れちゃったや。
と、やや気だるさを感じながらキッチンの前を通り過ぎようとした時、中から話し声がした。
「今朝監視員が来てな。それで色々あったんだよ」
「…監視員が?」
二人いるみたいで、前者は榛くんの声だと分かったけど、『監視員が?』と訊き返した後者の声は、聞き馴れない女の子の声だった。それで、普段なら気にしないんだけど、つい誰だろうかと気になって立ち寄ってみる事にした。
ゆうきくん探しは、一旦中止で。
「何の話?…ってまあ、『監視員』ってワードが出てたから、大体察しはつくけどね」
そう言いながらキッチンへ入ると、榛くんが視線をオズの方に移した。そして、オズに背を向けて榛くんと話していた女の子も、オズの声に反応して此方を振り返る。
その緩い二つ結びの女の子は、彩芽ちゃんっていう、確かオズより一つ年上の子だったと思うんだけど、最近…というより、普段からあまり見かけない子だ。
多分、部屋から出ることが少ないんだろうね。
突然オズが出てきたからか、「えっ?えっと…」とどもる彼女をよそに、榛くんに声を掛ける。
「今朝の事、彼女に話した?」
榛くんは「いや、」と首を横に振る。「詳しくは言っていない」
そこで、今度は彩芽ちゃんに「気になるよね?」と訊くと、彼女は控えめに頷いた。
「…だって。教えてあげようよ」
「そうだな…本人が言うならいいか」
オズの言葉に榛くんも同意し、説明しようと口を開く。
その時、オズは心の中でゆうきくんに「ごめん」と呟いた。
久々に彩芽ちゃんの顔を見たから、もうちょっと此処に居たい感じがする。
いきなりでしゃばっといて榛くんに「後は宜しく」、なんて言うのも気が引けるし。
何より、と彩芽ちゃんの手元…正しくは、その両手に抱きしめられた人形を見やる。
あの人形、襟元が解れちゃってるから、オズのボタン渡してあげたいんだよね。
そんな必要も無いかもしれないし、そもそも彼女は他人と馴れ合うのを好ましく思わなくて、拒否されちゃうかもしれないけど、そうしてあげたい感じがした。
別に、キミだって『世界』の一員なんだから、なんて青春ドラマの台詞みたいな事言うつもりは無いけどさ。今会話を止めて渡す訳にもいかないからね。
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ニャ助(プロフ) - 更新しました。こんなに短くてすみません(><) (2020年5月4日 11時) (レス) id: 636a33148d (このIDを非表示/違反報告)
ニャ助(プロフ) - お久しぶりです!最近更新出来ずすみません…!更新してきます! (2020年5月4日 10時) (レス) id: 636a33148d (このIDを非表示/違反報告)
(=゚ω゚=)にゃあ - 更新しました。 (2020年3月23日 15時) (レス) id: 91777e8ddd (このIDを非表示/違反報告)
(=゚ω゚=)にゃあ - 更新します。 (2020年3月23日 14時) (レス) id: 91777e8ddd (このIDを非表示/違反報告)
春雨(プロフ) - 更新しました!オズはまだ行く先決まってないので、使って話を進めてもらって構いません! (2020年3月21日 23時) (レス) id: 55d503be78 (このIDを非表示/違反報告)
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