この音響かせ!! 【なにわ男子】 (ページ25)

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#21　月海、吹奏楽の厳しさを知る。ページ25

月海side

今日は課題曲合奏。
殆ど譜読みはできているし、みんなと合わせても大丈夫。
な、はずだった。
後輩の花ちゃんに限っては
「緊張します……。月海先輩……。」
と言っていた。
花ちゃんとはそんなに話したことない。
丈君達に教えてる為、話す時間がない。
まだ1回とかくらいしか話したことないんだよねぇ。
チューニングして、音階練習して。
試しに合わせてみよう、と先生が言った。
4、3、2、1、

♪〜

いざ楽器を構え、マウスピースを口につける。
久々の合奏。
何時も2年は抜けてたからなぁ。
でも。

吹けない。

一人だけ、技術不足。花

花ちゃん、上手くなってる。
課題曲だから、吹かなければならない。

先生「ちょっと!ストップ!Tuba、遅れてる。どうしたの?」
多分発音が遅れてるんだ。
丈君達は他の部屋で練習している。
先生「はい、Tubaだけー。んー、15小節まで吹いて。3、2、1、はい。」

♪〜

一人だけ足を引っ張っている。
しっかりしろ、俺。
しっかりしろ、岶緖月海。

そうだ、あともう少しでなにわ男子達が見学に来る。
丈君達に恥ずかしい姿を見せてはならない。
丈君は
丈一郎「上手いんやろなぁ……。」
って。
失望するかもしれない。
そんなこと思ってたら。

音は外すし、指は動かないし。
ついでに。

先生「岶緖さん。響が下になっていますよ。ピッチも合ってない。どうしたんですか。」

とまで言われてしまった。
花ちゃんや友利花先輩にまで心配されてしまった。
友利花「どうしたの……?」
花「大丈夫ですか、先輩……?」
いつもの俺らしくない。

先生「じゃあ、岶緖さんだけ。はい!」

♪〜

俺だけの音が合奏室に響く。
時が止まっているように感じる。

先生「岶緖さん、なにわ男子の皆さんに教えているから、藤原君の指導係だからといって調子乗ってたんではないですか。最近おかしいですよ。反応も遅い。音もまともに出ていないし、腕が落ちています。」
先生の声は響く。
でも俺の音は響かない。
それを扉越しで丈君が聴いてるのだと思うとなんか辛くて。
俺は、上手くない。

月海「っ、すみません……。」

先生「すみませんと思うならちゃんとやりなさい。一回岶緖さん抜けて。」

俺抜きでやった合奏は美しかった。

丈一郎「……。」

Tubaを持った二刀流さんは俯いたまま、黙って扉越しで聴いていた。