あまいね 【原神】 【短編集】

終 ページ29

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村に戻っても涙が収まらなかった


自分の部屋のはずなのに何故か違和感がする


標本、コップ、本、ベット、椅子、すべてにおいて


窓に映る空でさえも


誰なんだ何なんだ


もうやめてくれよ


泣きつかれたティナリは眠りについた


マハールッカデヴァータは‘’世界から消えた”


すなわち、マハールッカデヴァータは“民に夢を返した”


そして、ティナリは夢を見た


いつものベットの中で、いつもの彼女がいる


『ティナリ』


にこやかに笑う彼女は輝く銀髪で


緑の瞳、虹彩が四つ葉のようで吸い込まれそうだった


声を出そうとしても出ない


『貴方は私のことを忘れてしまったんだろうね』


『でもいいの、それが運命だったんだから』


『あなたと出会えてよかった』


『最後まで私の正体を明かしてこなかったけど、貴方にはもう、分からない』


大きな瞳から涙が零れ落ちる


『世界から私は忘れられる』


『だけど私はあなたには忘れられたくない』


『こんなこと、あなたが辛いだけかもしれないけど』


『彼女の枝の私は、姿と自我があるだけで何もない』


『最後のわがまま、聞いて？』


ああ、彼女はもう、ここには、これは、


『あなたが私の言葉を』


これは、


『忘れませんように』


夢だ





このことを密かに抱え続けるのはティナリだけである


知恵は時に呪いとなる


記憶は時に、毒となる


彼女はもう、ここにはいない



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解説＆作者　（ちょい追加あり）→←消えた知識　ティナリ

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