揺れる気持ち〈うみげん〉 (ページ44)

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＊海人side

力なく笑うと元太は黙ってしまった

「でも俺はお前らが付き合って別に後悔とかしてねーから心配すんな」

嘘。本当は力抜くと今にも涙が溢れ出てしまいそう。

そんな俺の気持ちを察したのか元太は少し悲しそうな顔をした

あー、なんでお前が泣きそうなんだよ

元太の顔を見て何故か俺の気持ちは少し軽くなった

「あ、でもこれだけは覚えとけよ」

「なに？」

「お前がAのこと泣かせたらすぐ取り返しに行くからな」

' 取り返しに行く '

奪いに行く、では無くそう言ったのは少しの抵抗だ

「だから、Aと付き合えたからって油断すんなよ」

そう言うとすぐに元太はフッと笑って

「もちろん。海人には絶対渡さないから諦めなよ」

「こんのクソガキ、生意気言うようになったな」

そう言って俺らはなんとか平和に打ち解けられた

それから数時間後

俺は元太と解散した後すぐ近くの公園のベンチに座っていた

季節はもう少しで夏が終わる頃

もうすぐ秋ということで夜は少し肌寒い

俺は空を見つめた

今までの思い出が走馬灯のように蘇っていく

すると綺麗な星が少しずつ滲んでいくのが分かった

俺、泣いてるんだ

元太が知り合うよりも前から俺はずっとAのことが好きだったし誰よりも想っている自信があった

だが、想っているだけではダメなのだと今更気付かされた

ああ、自分が情けない。恥ずかしい。

頬を伝う涙を拭わずに空を見つめたまま

「俺、かっこつけられてるかなあ

Aに弱いとこ見せてないよなあ

これで正解だったのかなあ

Aのこと諦めらんないよ」

そう呟くと俺はベンチから立ち上がり、雑に服の袖で涙を拭いた

「俺はこれからもAが好きだよ」

その声は夜空へと吸い込まれていった

fin