揺れる気持ち〈うみげん〉 (ページ43)

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＊海人side

元太に誘われた当日

俺は居酒屋の前に立っていた

時刻は約束の10分前

ちょっと早いけどまあいいか

なんて思いながら居酒屋の入口に手をかけた

今日の仕事中、いや昨日連絡がきてからずっと気が重かった

どうせ言われるのはAのことだろう

分かりきってることを話されると分かってて気が進むわけが無い

本当は断ろうと思った。

しかし、それでは今までの俺と変わらない。逃げているだけだ。

それにAを諦めて背中を押した意味がない

本当は無視したかった元太からの連絡にきちんと向き合った

「あれ、海人？」

そう声がして振り向くとそこには元太が立っていた

「お、丁度いいな。入ろうぜ」

そして2人で中へと入ると小上がりのテーブル席へと通された

席に着くなり、メニュー表を俺に渡し

「最初何飲む？」

「じゃあ生で」

「OK、じゃああとなんか適当につまみ頼むね」

そう言ってテキパキと注文してくれた

本当に気が利くなあ

少し感心してしまう

「お待たせしました、生ビールお2つですー！」

すぐに店員さんがジョッキとおつまみを運んできてくれた

俺たちは酒を嗜みながらゲームの話やら、仕事、学校の話やら近況を話し合った

趣味が合うようで意外と話が盛り上がった

そして最初の1杯目を飲み終えた頃、予め頼んでおいた2杯目が到着した

「何笑ってんだよ」

いや、別にと言う元太の顔は完全に笑っている

「おい、言えよ」

そう言うと

「案外可愛いの飲むんだなと思って」

ピーチウーロンを指さしながら笑った

そう言う元太は芋焼酎を飲んでいる

「お前、その顔でそれは渋すぎんだろ」

それからある程度酔いが回ってきた頃

「あのさ、俺海人に謝んなきゃいけなくて」

いきなり声のトーンが下がる元太

「俺、早とちりして勝手に勘違いしてAさんのこと傷付けた」

「…え？」

思ってもみないことを言われたので思わず口から出てしまった

「俺Aさんと海人が付き合ってるんだと思ってAさんに距離とったり…」

それから元太の今までの話を聞いた

「ちょっと待って。それ謝んの俺の方じゃん…」

「え、、？」と顔を上げる元太

あの箱を見て勘違いしたってことはつまり俺のせい。

「いや、違う、海人のせいじゃ！」

遮って俺は言う

「いや俺のせいだよ」