4-1▼嫉妬 ページ25
｢ありがとうございました｣
｢いや、別にいい。猫宮ほどの方向音痴を一人で探すのは合理的ではないからな｣
見かけによらず、相澤先生は世話を焼いてくれるようだった。礼を伝えると、先生は｢早く帰れよ｣と職員室に入っていった。
隣のAはビクビクした様子で、俺を伺っている。
｢A、どこ行ってた。廊下に蝶々でも入り込んできたか？｣
｢えっと……うーんと、｣
(咄嗟に言い訳も出来ないのか)
反省しているのか、いつもより大人しい。あまり叱ってやるのも可哀想だと思い、｢帰るぞ｣と手を引いた。
実はああ見えて高校生活に浮かれているのか？
入学初日といい今日といい、少し目を離せばふらふらと何処かへ行ってしまう。Aの方向音痴っぷりは相澤先生も認める程だ。一人で歩かすなんて不安で仕方ない。おそらく学校から家までの道のりすら帰れないだろうし。
普段通りに接してやろうと、自分よりも30cm近く背の低いAを自然と見下ろした。
いつもならぼんやり景色を眺めていたり、構ってとばかりに腕を引っ張ってくる彼女だが、今日は下を向いていた。そんなに落ち込まなくても、と声をかけようとした時、ようやく異変に気付く。
｢……A、いつから体調悪かったんだ。授業の時は普通だったよな｣
｢……しょーと、｣
｢家まで歩けるか？無理そうなら車呼ぶ｣
｢ん、大丈夫、｣
頭痛？腹痛？いや、違う。痛がった表情じゃない。となると、身体の怠さや精神的な疲れか。ここ最近、具合が悪かったわけでもないはずだ。
思い当たるのは放課後、Aが居なくなった時くらいだ。そしてこの症状は、彼女の個性の反動と全く同じ。
｢……誰に、使った｣
｢っえ、と……｣
立ち止まって、繋いだ手をぎゅっと握った。
まさか、他の奴に使ったのか？俺の居ないところで？
くつくつと嫉妬心や独占欲が煮え滾る。自分以外にあの個性を使ったなら、Aの怠さの原因は赤の他人だ。俺じゃない誰かの感情を、彼女の小さな身体に取り込んでいる。
嫌だ、嫌だ。Aまで失いたくない。今度こそ守る。出会った時にそう決めたのに。
｢……とにかく帰るぞ。暗くなると姉さんが心配する｣
Aは返事もせずに、弱々しく俺と手を合わせるだけだった。
どうして握り返してくれないだ。俺はこんなにも大切にしているのに、なんで、なんでAは……！
少しでもイライラを抑えようと、帰宅するまで彼女を直視しなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 751人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
二 - イラスト上手すぎる、、。 (2021年5月5日 7時) (
レス) id: f6d5c08391 (このIDを非表示/違反報告)
こたつゆず(プロフ) - 絵上手すぎです!!尊敬します!!私下手くそすぎてやばいので教えて貰いたいくらいです!! 師匠と呼んでいいですか? (2018年10月7日 20時) (レス) id: 3780c963fa (このIDを非表示/違反報告)
影猫(プロフ) - 花さん» お褒めの言葉ありがとうございます……！嬉しいです(*´ω｀*)トプ画も一応考えていたんですけど、あっという間に続編に……イラスト更新と本編の更新は別々になりそうです。トプ画の件も考えておきます、貴重なご意見ありがとうございます！ (2018年4月30日 0時) (レス) id: 3f1a8429d6 (このIDを非表示/違反報告)
花 - 絵、上手ですね！こういう感じの絵って大好きです！タイトル(?)の所に画像載せれるんですけど、描かないんですか？私はいいと思いますけど…時間があるときに考えて頂ければ幸いです！どうかご検討お願いします。長文失礼しました！((更新頑張って！ (2018年4月28日 22時) (レス) id: 3fabea4b64 (このIDを非表示/違反報告)
影猫(プロフ) - 鈴木美妃さん» コメントありがとうございます。申し訳ございませんが、現在夢絵のリクエストは受け付けておりません。もう少し描き慣れて、時間が余っていましたらご連絡しますm(_ _)m (2018年4月18日 19時) (レス) id: 3f1a8429d6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：影猫
| 作成日時：2018年4月7日 17時
