【wrwrd】愛してその醜を忘る [3]【Zm】

21-3▽ ページ22

.


.


検査の結果、特に異常はなかった。

もしかして病気だったら、と心配していたゾムも私もひとまず安心した。
女医がいなかったため、国立病院から急遽来てもらったらしい。今は処方してもらった鎮痛薬のおかげで、大分痛みが引いてきた。

迷惑ばかり掛けて申し訳ないし、何だか恥ずかしい。基地内は男の人ばかりだから、大事にされて色んな人に今回の出来事を知られるのも嫌だ。

今回お世話になった女医さんにもう一度お礼を言い、少し体を起こして頭を下げた。
軍医室を出ていくのを見送り、扉が閉められた瞬間、大きなため息をこぼしたのはゾムの方だった。


｢っはぁ、Aが無事で良かったぁ……｣

｢ごめんねゾム、朝からこんなことになっちゃって……｣

｢んーん、Aが病気じゃなくてほんと安心したわ。もしそうだったらおれのせいかもしれなかった訳だし｣

｢……？｣


もし病気だったらゾムのせい……？頭が良くないから、よく分からない。そもそもどんな病気と関連しているのかもさっぱり。

ゾムの方をちらりと見ると、流石に疲れたのか丸椅子に座り込んでいた。
カーテンの外にはしんぺい神さん(此処の軍医らしい)が居て、ひと息ついて仕事に戻ったようだ。忙しそうなのに、本当に申し訳ない。


ゾム、と名前を呼ぶと無言で手を握られた。
……病人というわけでもないのに、まるで死にかけの恋人を見送るかのような優しい目でずっとこちらを見ている。
迷惑や心配を一番掛けてしまったのはゾムだ。何とお礼を言えば良いのだろう。
少し悩んで、もう一度名前を呼んだ。


｢ゾム、本当にありがとう。……あ、あのね、｣

｢んー……？｣


疲れからか眠そうなゾムの声が側から聞こえた。いつの間にかベッドに近付いて来ていて、すぐ隣にはゾムの顔があった。

唾を飲み込み、どくどくする腹部と心臓を抑えながら、口を開く。


｢す、っ……好き、｣

｢え？｣

｢いつも、いつもね、助けて欲しい時にゾムが来てくれるの。ヒーローみたいにカッコよくて、優しくて、えっと、だから……好き、です……｣


最後が何故か敬語になってしまったし、自分でも何を言っているのかよく分からなかった。

けれど、ゾムが好きだという気持ちをもう一度ちゃんと伝えたかった。
面倒な奴だと思われて、愛想を尽かされ捨てられちゃったらどうしよう、と考えてしまって。勿論、ゾムがそんなことをするはずがないと分かっているけれど……。


ドキドキしながら、ゾムの顔を見た。

21-4▽→←21-2▽

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す