20-5▼ ページ17
｢A、ただいま｣
ひょこりと寝室を覗くも、Aの返事はなかった。
布団を被って丸くなっているのか、顔すら見えない。寝ているのなら夕食が作り終わるまでは起さなくても大丈夫かと、それ以上声は掛けなかった。
しんと静かな家内が何だか久しぶりに感じて、同時に少し寂しい。
いつもなら外から帰って来れば、Aが玄関まで出迎えてくれる。まるで幼子が親の帰りを家で一人待っているかのようだ、なんて思ったこともある。
Aには言わないが、実は本人も無意識にそういう感覚になっているのかもしれない。いや、Aは親の帰りを待ったことなんてないのかもしれないけど。
(……よし、Aの為に頑張ろう)
今から作る料理も、面倒なデスクワークも、Aの為なら。Aの為なら、人だって殺せる。頑張れない筈などない。
少し機嫌が良くなって、口角を上げる。
グラタンが焼き上がる頃にはきっと、匂いに釣られて布団から出てくるだろう。
レジ袋から食材を取り出し、調理に取り掛かった。
.
チン、とグラタンが焼けたことを知らせる高い電子音が鳴る。パソコンの画面から視線を外し、スリープにしてキッチンに向かった。
……起きてくると思ったのに、寝室から出てこない。本当にずっと寝ているのか、まだ恥ずかしがっているのか。
別に怒るつもりもないが、焼き上がるのを待つ時間があまりにも暇で。今までどうやって一人家で過ごしていたんだろう、なんて思ってしまう程、Aが居る生活にも慣れてきた。
起きてこないものは仕方ない、ともう一度寝室に向かった。
帰宅した時と変わった様子は特に無く、近付いてみるとAの寝息が聞こえる。……相変わらずよく寝る子だ。
｢A、起きて。ご飯出来たから食おうや｣
｢……、んん…………ぞむ……？｣
｢はい、おはよう｣
ちゅ、と寝起きのAにおはようのキスをプレゼントし、ぐいぐいと手首を引いてリビングまで連れて行く。
焼き立てのグラタンを置いたテーブルの前に座らせた。
｢眠いん？夕飯食べて……えぇと、薬も飲むんかな？とりあえず飯はちゃんと食べてぇな？｣
｢うん……いただきます｣
Aはまだ寝ぼけているのか、片手でスプーンを掴んでグラタンを掬い、冷やしもせずに口に入れようとする。どう見ても熱々で、何も考えずに口に入れれば火傷してしまうだろう。
そっとスプーンを奪い、息を吹いて冷ましてからAにそれを向けた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1116人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
影猫(プロフ) - トウマさん» ありがとうございます！私もヤンデレ好きです(笑)今度ガチもんのヤンデレも書いてみたいです。更新頑張ります……！ (2018年3月8日 3時) (
レス) id: 3f1a8429d6 (このIDを非表示/違反報告)
トウマ(プロフ) - 影猫さんのゾさんがめちゃくちゃ好きです…ヤンデレが大好物なので（）更新頑張ってください！ (2018年3月7日 22時) (レス) id: a615484a47 (このIDを非表示/違反報告)
きゃらめるそーす(プロフ) - 影猫さん» 了解ですっ (2018年2月23日 13時) (レス) id: 7e83d7a6cd (このIDを非表示/違反報告)
影猫(プロフ) - きゃらめるそーすさん» コメントありがとうございます。ついったでフォロー申請送って頂いた方でしょうか？誤操作で蹴ってしまったので、申し訳ございませんがもう一度送って頂けないでしょうかm(_ _)m (2018年2月23日 13時) (レス) id: 3f1a8429d6 (このIDを非表示/違反報告)
きゃらめるそーす(プロフ) - 影猫様のゾム氏がかっこよすぎて禿げそうになるぐらい悶えてますwこれからも頑張ってくださいっ！応援してますっ (2018年2月23日 13時) (レス) id: 7e83d7a6cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：影猫
| 作成日時：2018年1月8日 18時
