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早朝。
電車の音が聞こえたから、もう5時は過ぎてるんだろう。
股関節の軋むような痛みが、昨夜の出来事を思い出させる。
オールで過ごした朝帰りの学生みたいに、
寝不足だけど満たされた気持ちが懐かしかった。
「やっぱ送らなくていいや!」
涼架のマンションの前まで降りて来て、
「夜も来てもらって悪かったし」と言った。
「なぁんでよ。送らせて?」
「…涼架、彼女いるのにこういうことしちゃダメだよ」
昨日、何度も何度も言おうとして言えなかった言葉が、
夜が明けたらすんなり口にできた。
清々しいほど、あぁ、もう終わったんだな、と思った。
「待って待って」
「もー!だから、」
「彼女…?って何のこと?」
なのに。
「え?」
「いないけど」
「え?」
「え?」
デパートで、「藤澤先輩!」って呼んでて、
涼架の肩に触れてて…ってあれ………?
「あの子…彼女じゃないの…?」
「あの子?」
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作者名:kiki | 作成日時:2025年6月26日 10時