北の国では2［ゴールデンカムイ］ (ページ13)

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62話ページ13

戸が開いて杉元たちが入ってきた

『よかった！無事だったんだな！』

杉元「ﾊｧﾊｧﾊｧ…」

鯉登少尉はお茶を飲みながら菓子を食ってる

月島「ペチカの上がこの部屋で一番暖かい、ロシア人はその上で寝るんだ」

そう言われて杉元谷垣チカパシの3人は、狭いペチカの上にぎゅうぎゅうに入り込んだ

鯉登「ふふ、虫みたい」

『虫…』

月島「お前ら命拾いしたな。あの燈台は日露戦争以降もう使われていないものらしい。この人たちがいなかったらお前ら今頃カチンコチンだ」

牛小屋に戻るとヘンケがソリを直している

谷垣「今から思うとあの吹雪の中でリュウが列から外れたのは、燈台の方向を考えるに前を走っていたソリについて行こうとしてたんだと思う」

杉元「疑ってごめんな、リュウ」

『リュウは犬ぞりに向いてるのかもしれないな』

鯉登「月島ァ！金槌が手にくっついた！」

月島「この気温なのに素手で金属に触れればそうなるでしょう、無理やり剥がせば手の皮が破けます」

『僕がおじさんにお湯をもらってきます』

月島「いい、誰か小便かけて融かしてやれ」

谷垣「…」

杉元「俺、でるぜ。手ぇ出しな」

僕は何も言わずに目を瞑った

谷垣「……見なくて正解だ」

***
住人の夫婦に料理をご馳走してもらった

杉元「なにこの汁物！真っ赤じゃん！」

月島「この汁物はボルシチといって、赤いのはビーツというカブの色素だ」

チカ「美味しいはロシア語でなんていうの？」

月島「フクースナ」

『フクースナ！』

杉元「フクースナ」

チカ「フクースナ！」

夫婦はとても喜んでくれた

月島「いつもふたりだけなので、賑やかな食事はうれしいとさ」

杉元「ご家族は他にいないの？」

鯉登「あの写真は娘か？」

鯉登少尉がそういうと、夫婦の顔は暗くなった

月島さんが聞いた話によると、日露戦争前から燈台守をしていた親子3人はここで暮らしていた

ある日ロシア軍の脱走兵が現れて、しばらくこの燈台に居付いたが、その脱走兵は娘を連れ去ってしまったらしい

娘をあちこちで探しても見つからず

政府や軍に頼んでも何もしてくれなかった

このご夫婦は娘の帰りを燈台でずっと待っているそうだ

杉元「娘さんのことがあって燈台は残り、俺たちは命を救われたってことか…この娘さんの写真一枚借りていってもいいか？」

『途中で探すんだな』

杉元「ああ」

杉元は優しいんだ

こういう時