6.懇願 ページ8
敦君は思っていたよりも速く戻ってきた。
「御免ね、遅くなって!
乱歩さんは今一寸出掛けていたから、太宰さん連れてきたんだけど……」
「有り難うお兄ちゃん!」
私は太宰さんの方へと向き直る。
……太宰さん大きい。
今なら中也さんの気持ちがわかる気がする
「此のお嬢さんかい?私を呼んでいたというのは。」
「はい、何でも話が……」
「太宰さん、お願いがあります!」
私は敦君の言葉を遮り、じっと太宰さんを見つめ、云った。
「私を、武装探偵社で働かせて下さい!」
「え?!!」
失礼な言い方だか、敦君が間抜けな声を出して驚いている。
当然だけどね。
一方、太宰さんは少し目を見開いて此方を見ていた。
「クッ……ふふっ、面白いお嬢さんだ。
でも、残念だけど其れは無理なお願いだねぇ。」
「えぇ……どうしてですか?」
私は問う
そう簡単にはいかないことは分かっていたが、笑われたのに少し腹が立ったからだ。
「先ず、武装探偵社は荒事専門の探偵集団だ。君のように可憐なお嬢さんにはあまり向いているとは言い難いだろう。
そしてもうひとつ。君はまだ小学生だろう?
もう少し大きくなってからの方がいい。」
太宰さんは悲しそうに目を伏せながら云った
「まだ、君が知らなくて良いものも沢山あるのだよ。」
その表情に、思わず呼吸が止まる。
儚げな表情をみて、なにも言えなくなってしまった。
敦君も、心配そうに太宰さんを見ている。
「そういうことだよ!まあ、もう少し大きくなったら私の心中相手にでも……」
「太宰さん!」
先刻の儚げな表情は直ぐに消え、また元の道化師ような表情に戻った。
此れで、諦めるだろう____
太宰さんはそう思うだろう。
でも
私はそんな中途半端な気持ちで、探偵社に入ろうとはしていない。
危険なことも分かっている。でも、そんな言葉だけで諦めきれる程真っ直ぐでも純粋でもない。
「____太宰さん」
「…! 如何かした?」
「………?」
太宰さんが先刻よりも驚いた表情をしている。
それもそうだろう。私は
先程の純粋で明るい子供の皮を被っていないのだから。
詰まり、今私は『高校2年生の一条A』なのだ。
「もう一度言います。私を武装探偵社で働かせて下さい。」
太宰さんはジッと私を見つめ、そして云った
「___ふむ。どうやら、真剣だったようだね。
少し、話だけでも聞かせてはくれないかい?」
「勿論ですよ!」
私は先刻の雰囲気を飛ばし、笑顔で答えた
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月城捺樹(プロフ) - 紅夏さん» 有難う御座います!更新させていただきました! (2018年5月14日 16時) (レス) id: b10180abe7 (このIDを非表示/違反報告)
紅夏(プロフ) - 面白かったです!これからも更新頑張ってください! (2018年5月1日 23時) (レス) id: 6f15b8d456 (このIDを非表示/違反報告)
月城捺樹(プロフ) - 1つ1つ返せなくてすみません!沢山の方から期待して頂いてとても嬉しいです。遅くなりましたが更新させていただきました。 (2018年2月24日 21時) (レス) id: b10180abe7 (このIDを非表示/違反報告)
みっく - とても面白いです!応援してます、更新期待してます (2018年2月21日 18時) (レス) id: c025c89ca4 (このIDを非表示/違反報告)
蛍原(プロフ) - このような内容の作品大好きです! 次の話を期待して待機してます(●´ω`●) (2018年2月19日 23時) (レス) id: 5ee87af96c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月城捺樹 | 作者ホームページ:
作成日時:2017年10月14日 18時