Ep.16 ページ19
―――あぁ、そういえば、言ってたな。一年生の悠仁が、特級案件に派遣されて死んだとかなんとかで……また生き返ったとか………ある程度の実力つけるまでは死んだことにして匿うって話だっけ?あぁ、そうだそうだ。いや、でもわたし、生きてるって知ってるんだよね……。つい三日前に静岡出張のお土産でうな○パイとお茶渡したばっかりだし。
………でも、数週間くらいしか一緒に過ごしてないとはいえ、同級生が死んだら堪えるものだよな。
―――術師として、どんな人を。
「―――誰も」
「は?」
「……私、なにか立派な志があって呪術師になったわけじゃないからさ。申し訳ないけど、模範的な答えも、参考になるような答えも言えないよ」
こんなこと、仮にも教師が言っていい答えじゃないんだろう。でも仕方ない。本当のことなんだから。
力を持っているからと言って、それを大衆的な正義のために―――多くの人を助けるために、その力を行使しなくてはならない謂れはない。力を使うか使わないか、力をなんの目的で使うは、各々の意思に委ねられるべきだ。それが倫理に反しない限り。
……そう思っていた、思っている。今も昔も。
だから私には"どんな人を助けたい"と誰かに自信を持って言えるような信念がない。
「はじめは、幼馴染みを守りたかっただけ。それだけの思いで高専にきたの」
「幼馴染み?」
「そう」
「幼馴染みを守りたくて術師になったけど………呪術師の肩書は、すぎた重荷だったな」
恵が驚いたような顔で私を見た。自嘲的な笑みでも浮かべていただろうか。顔を上に背けける。夜闇の曇り空が視界を覆った。
ひどい顔をしていたのかもしれない。でも、自分ではわからなかった。
「男前ですね」
「惚れてもいいよ」
「遠慮しときます」
「ウルトラドライだね」
「あ、宮下先生!」
「やっほー野薔薇。あはは、ボロボロじゃん」
「パンダ先輩にぶん投げられまくったんですよ!」
テンポよく軽口を叩く。クスリと笑った時、野薔薇の声が後ろから聞こえて、反射的に振り向いた。小走りにやってきた彼女の姿はボロボロで、これは相当扱かれているなと察する。
もしかして、というか多分恵もそうだな。これ以上の訓練は酷か。
予定変更。やっぱ帰ろ。
ゆっくり休みなね、とわたしは二人にヒラヒラと手を振って、その場を後にしたのだった。
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やなり(プロフ) - jenniferwu3429さん» 原作は辛すぎますよね……。 (8月13日 18時) (レス) id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
jenniferwu3429(プロフ) - この作品を読む度に禅院姉妹のことを思い出すな (7月13日 3時) (レス) @page4 id: 426e07a7b9 (このIDを非表示/違反報告)
やなり(プロフ) - RIOさん» お返事遅くなってしまいすみません!コメントありがとうございます!こうしてコメントを、いただくと筆が乗ってしまう単純なわたし……(^-^; 少しづつにはなりますが更新していくので、お付き合いいただけるとうれしいですm(_ _)m (2022年5月28日 9時) (レス) id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
RIO - 早く続き読みたいです! (2022年5月24日 6時) (レス) @page11 id: 759836d8d0 (このIDを非表示/違反報告)
やなり(プロフ) - sou様、こ、光栄なお言葉をありがとうございます……!あらかじめ書き溜めた分はコツコツ更新していこうと思っています。完結まで私の妄想に付き合っていただけるとうれしいです(*´꒳`*)。ご期待に添えるように頑張りますね!! (2022年5月22日 9時) (レス) id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やなり | 作成日時:2022年5月21日 16時