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陌拾壹 ページ18

その夜、夢を見た。


錆兎と真菰に手を引かれ、真っ白な世界を駆ける。直ぐに夢だと気付いたが、どうしても今目覚めてはいけないような気がした。


急に彼等が立ち止まり、一瞬よろける。その瞬間、彼等は跡形もなく掻き消えてしまった。


代わりに、目の前に一人の女性が現れた。


自分とよく似た容貌で、悲しげな笑みを浮かべたその人は、優しく私の手を引いた。


「やっと、完成する。」


そのまま引き寄せられ、抱き締められた。


その温もりに、涙が溢れそうになるのは何故だろう。


「ずっと傍で見ていたのに、何も出来なくてごめんなさい。」


声が、震えている。泣いているのだろうか。


「此処までよく頑張ったね。」


その時、はっと気付かされた。


私はこの人を、知っている。


竈門君に初めて出会ったあの時、頭に流れ込んできたのは、見覚えのない記憶だった。




耳飾りを付けた男が、泣いている。


それが何故かどうしても悲しくて、その涙を拭ってやろうと手を伸ばす。


その時、彼の瞳に映っていたのは、地面に横たわる 私とよく似た血だらけの女性。




間違いない、彼女だ。


貴方はまさか、そう口から発する前に、彼女は耳元で確かに囁いた。


「私の記憶は、貴方の中に眠っている。彼等(・・)に会えば、きっとその記憶は花開くでしょう。」


ゆっくりと体を離され、両手で肩を掴まれた。同じ薄紅色で白い花の模様が浮かび上がった瞳が、しっかりとこちらを見据えている。


「私達一族の復讐を貴方一人にさせるなんて、あまりにも身勝手で 間違っているのは分かっている。けれども私達は、貴方に託すしかない。」


その背後に、此方を真っ直ぐに見据えるたくさんの人影が見えた。


「私の全てを貴方に託す。だから、」


その女性は、穏やかな笑みを浮かべた。


「あとは頼みます。」





目を覚ました。


ばっと飛び起きて、辺りを見渡す。けれども鱗滝さんが隣に寝ているだけで、他に誰もいない。


動悸が激しい。胸に手を当てて、ゆっくりと動揺を沈めていった。


ある程度落ち着き、窓を見やると、丁度夜が明けようとしている所だった。




山々の稜線に、橙色が滲む。雲の切れ間が明るい山吹色を覗かせる。


空を覆っていた雲は流れ、光を帯び始める。





「貴方の思い、確かに受け取りました。


火輪の巫女、暉峻 晄璃(ひかり)様。」





燃えるような朝日が姿を現し、夜に終止符が打たれた。

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酸漿(プロフ) - きなこ餅さん» 有り難う御座います。これから続編を書いていくので、そちらの方も是非お楽しみください。 (2019年10月20日 21時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ餅 - たくさん伏線がはられていて、読む度にドキドキします! これからも更新頑張って下さい! (2019年10月19日 21時) (レス) id: 3d1d19266b (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 神桜佳音さん» 嬉しいコメントありがとうございます(^-^)励みになります。これからもどうか宜しくお願いします。 (2019年10月13日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
神桜佳音(プロフ) - ようやく納得しました…!話が深い…。辛い。けど、すごい好きです!無理されないで更新されてください!続き待ってます! (2019年10月10日 19時) (レス) id: 78c574c661 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年9月21日 18時

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