玖拾陸 ページ1
拝啓、敬愛なる御館様へ
この手紙が貴方様の目に触れられているという事は、俺は討ち取られたという事でしょう。
俺は多くの罪のない人を喰い殺しました。それが自分の意思によるものでないにしても、罪の重さは変わりません。
暉峻師範は剣すら握ったことのなかった俺を、たった数ヵ月で剣士に育ててくれました。
今回の件は、全て俺の未熟さが招いたことです。
師範が責任を感じて腹を切って詫びるような事があれば、俺が命を懸けて彼女を守った意味がありません。
師範は鬼殺隊になくてはならない存在です。俺ごときで失っていい人ではない。この責任は、どうか俺一人にお願いします。
そして鬼に堕ちた身でこんな事を言える立場にいないことは重々承知していますが、貴方様に折り入っての願いが御座います。
彼女はずっと一人で一族の責務を背負ってきました。かつてその一端を見てきた者として、どうしても耐え難い事があります。
どうか一部の人だけで良いので、件の件を開示していただけないでしょうか。
あの件を知っているのは、師範と貴方様だけです。
まだ明かすべき時期ではないと分かっています。ですがどうしても、一人で戦わなければならない彼女が不憫で堪らないのです。
どうか笑顔でいて欲しい。幸せな未来を歩んで欲しい。それが俺の最後の願いです。
彼女の事を心から分かって支えてくれる人が現れることを、切に願っています。
最後に、貴方様のご健康とご多幸を切にお祈り申し上げます。
今まで本当にありがとうございました。
敬具
十月二十五日
天河 空翠
御館様
「空翠。君の思いは確かに受け取ったよ。」
窓から吹き込むそよ風が、耳元の髪を揺らす。
「鬼に堕ちてもなお、君は鬼殺隊の為に尽くしてくれたんだね。…最期までAを守ってくれて、ありがとう。」
上弦の鬼が討ち取られ、百年 動かなかった状況が変わった。
「君が守ったものを、決して無駄にはしない。」
そして全ての虧鬼が討ち取られた今 波紋は大きく広がり、あの男への道が開けようとしている。
「鬼舞辻 無惨。例えこの命が果てようとも、私達は必ずお前を倒してみせる。」
最終決戦は、もう目の前だ。
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酸漿(プロフ) - きなこ餅さん» 有り難う御座います。これから続編を書いていくので、そちらの方も是非お楽しみください。 (2019年10月20日 21時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
きなこ餅 - たくさん伏線がはられていて、読む度にドキドキします! これからも更新頑張って下さい! (2019年10月19日 21時) (レス) id: 3d1d19266b (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 神桜佳音さん» 嬉しいコメントありがとうございます(^-^)励みになります。これからもどうか宜しくお願いします。 (2019年10月13日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
神桜佳音(プロフ) - ようやく納得しました…!話が深い…。辛い。けど、すごい好きです!無理されないで更新されてください!続き待ってます! (2019年10月10日 19時) (レス) id: 78c574c661 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年9月21日 18時