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あれから三ヶ月が経った。


顔見知りも増え、行きつけの甘味処もでき、すっかり東京の地に馴染む事が出来ていた。


___そして今宵も鬼を狩る為、夜を駆ける。





「其処に居るのは分かっているよ。出ていらっしゃいな。」


有る民家の中の押し入れに向かって、呼び掛ける。感じる気配は、二つ。恐らくまだ人をそこまで喰らっていない、所謂雑魚鬼だ。


床の軋む音がした。ゆっくりと姿を現したのは、まだ年端もいかない二人の少女だった。


「私達を、殺しに来たのか?」


小さく頷く。すると片方の少女が震え始めた。


「嫌だ、嫌だよ、お姉ちゃん。まだ、死にたくない。」


胸が、痛む。


「大丈夫。今夜も私が守ってあげるから。」


けれどもこれが私の仕事だから。…それでも、せめて、


「抵抗しないのなら痛くはしない。」


刃を抜いて、頸元に突きつける。ごくり、と彼女達の喉が鳴った。


「…貴方達は、後悔している?」


その問いかけで、彼女達の瞳に涙がせりあがって来るのが分かった。


「私は、私達はただ幸せに暮らしたいだけだ! お前如きに何が、「お姉ちゃん、もう良いよ。」」


妹らしき少女が、姉の手を掴む。


「もう、良いの。」


姉の瞳が揺れる。妹は何かを囁き、此方に向かって頭を下げた。


「私達は、生きる為にと 多くの人間を喰い殺してきました。でももう、そうまでして生き続けるのは嫌です。」


真っ直ぐに、見つめられる。


「どうか私達を、終わらせて下さい。」


死ぬ事は、怖いだろう。それでも彼女は、いや彼女達は覚悟して此方を見据えていた。


全集中・暉の呼吸 天菩比ノ舞・無碍光(むげこう)


それは祭具を両手で握り、強く踏み込んで祭具を振り翳す舞い。


斬られた者が苦痛を感じないように、疾さと斬り込む角度を追求した、慈悲の一閃。


ぽとり、と二つの頸が地に落ちた。


その口元には確かに笑みを浮かべていた。


「願わくば、貴方達の来世が幸せなものでありますように。」


祈りを、捧げる。次に目を開けたときには、彼女達は跡形も無く消え去っていた。





「カァ、カァ! 次ハ合同任務、合同任務! 至急大阪ヘ向カエ!」


「え、大阪? それに誰と?」


「ソレハ着イテカラノ オ楽シミ。ケ、ケ、ケ!」


「何時からそんなに意地悪になったの…。」


大阪、か。初めて行く場所だ。一体誰が待ち受けているのだろう。


もう一度祈りを捧げ、その場を後にした。

伍→←參



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mikki-(プロフ) - 酸漿さん» ひぇ……お友達さん絵が上手すぎやしませんか????貴方の作品もお友達さんの絵も好きです応援してます!! (2019年7月29日 19時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - mikki-さん» 友達が書いてくれたものです。登場人物紹介に載せているのは、角&耳っこメーカー様からお借りしたものです。紛らわしくてすみません。 (2019年7月29日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
mikki-(プロフ) - 初めまして。質問なのですが、表紙のイラストは酸漿様が描いたものなのですか?教えて下さい (2019年7月29日 18時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 金糸雀さん» その通りです。夢主の母を鬼にしたのも彼です。彼は自ら会いに来るまでは待つ、という約束を律儀に守っています。 (2019年7月7日 20時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - まさか、過去の話に出てきて鬼は上弦・壱ですか? (2019年7月7日 1時) (レス) id: 359e27b0ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年6月16日 19時

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