參拾玖 ページ41
浴場から部屋に戻る途中に、男の柱達が居るであろう部屋の前に立つ。
大きく息を吸って、部屋の外から呼び掛ける。直ぐに返事が有り、姿を現したのは煉獄さんだった。
「おぉ、A。どうしたんだ?」
「夜分遅くにすみません。義勇を、呼んでもらっても宜しいですか?」
煉獄さんが彼を呼べば直ぐに私に気付き、嬉しそうに駆け寄ってきた。
「A!」
「義勇…」
手招きをして、廊下に連れ出す。無邪気な顔を見て気持ちが揺らぎそうになるが、これだけはしなければならない。
「義勇。歯を食いしばれぇ。」
「え、あ」
直後、溝尾に拳をめり込ませる。
その勢いで、彼は外まで吹っ飛んで行く。
倒れたままの彼にゆっくりと近付き、囁いた。
「竈門兄妹の件の事、詳しく聞かせて貰おうかねぇ。」
「あ、あれは…」
咳き込みながらもあたふたと慌てる彼を見下ろし、溜め息をついた。
「…どうせ、反対されるとでも思ったんでしょう?」
「あ、あぁ「この馬鹿!」」
始めて見せる表情に驚いたのか、彼は目を見開いた。
「あの子達の為に命を懸ける事が悪いとは言わない。でも私は貴方の事が大切なの。…だから、反対されるとは分かっていても相談位はしなさい。」
しんと静まり返る。
「…悪かった。」
ばつの悪そうに顔を反らした彼を見て、次はないぞと微笑んでみせた。
「いやぁ、盛大に吹っ飛んだなぁ。」
「…お見苦しい所を見せてしまい、誠に申し訳ございません。」
「君は本当に冨岡と仲が良いんだな!」
「私を育ててくれた 大切な師なので。…まぁ今となっては手のかかる仔犬のような存在ですが。」
「君のように心から思ってくれる人がいるなんて、冨岡は本当に幸せ者だな!」
「…煉獄さん、」
「どうした?」
「私は煉獄さんの事も大切ですよ?」
当たり前の事だと思っていた。それなのに彼は呆けたように口を開け、静止した。
…伝わっていなかったのだろうか。
「私は煉獄さんも大切です。ですが立場上そう軽々しく口にする訳にはいかないので、出来るだけ言わぬよう控えているんです。」
「…そうか。」
あ、
…いつも太陽みたいな人だと思っていたのに。
この人 こんなにも優しく笑うんだな。
その瞬間何故か急に胸が激しく鼓動を打ち鳴らし始める。
…胸の高鳴りに戸惑いながらも、何処かそれを心地好いと思う自分がいた事には まだ気が付かなかった。
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mikki-(プロフ) - 酸漿さん» ひぇ……お友達さん絵が上手すぎやしませんか????貴方の作品もお友達さんの絵も好きです応援してます!! (2019年7月29日 19時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - mikki-さん» 友達が書いてくれたものです。登場人物紹介に載せているのは、角&耳っこメーカー様からお借りしたものです。紛らわしくてすみません。 (2019年7月29日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
mikki-(プロフ) - 初めまして。質問なのですが、表紙のイラストは酸漿様が描いたものなのですか?教えて下さい (2019年7月29日 18時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 金糸雀さん» その通りです。夢主の母を鬼にしたのも彼です。彼は自ら会いに来るまでは待つ、という約束を律儀に守っています。 (2019年7月7日 20時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - まさか、過去の話に出てきて鬼は上弦・壱ですか? (2019年7月7日 1時) (レス) id: 359e27b0ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年6月16日 19時