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參拾漆 ページ39

昼時となり、一時間の休憩となった。


昼食をとるため、屋敷にある応接間まで皆でぞろぞろと向かう中、私は休憩になったのにも関わらずその場から動かない実弥の元に歩いていった。


「ねぇ、手を出して。」


無理やり右手を引っ張り出す。止血はされ、一応布が巻かれていたが、やはり会議が始まる直前だったからだろう、その巻き方は雑だった。


布をほどいて水で軽く洗い流し、化膿しないように軟膏を塗り、丁寧に包帯を巻いていく。


「……オイ、」


道具を片付けていると突然腕を掴まれる。


掴まれた私の手には、刀を握った時に出来た傷があった。


「私が勝手にした事だから、気にしないで。」


そうは言っても罪悪感があるのだろう、彼は顔を歪めたままじっと此方を見つめ続けた。


「…分かった。それじゃあ、」


その瞬間強烈なデコピンを食らわせる。…余りに威力が強かった所為か、彼は背中を仰け反らせて悶えた。


「ね、これでお相子(あいこ)。ほら、ご飯食べに行こう。」


若干涙目の彼の手を取り、引っ張りあげる。その様子を息を殺して見ていた者達の存在には気が付かなかった。


「え、ちょっ、あれはどういうことですか?(小声)」


「むぅ、俺も知らなかったぞ!(勿論此方も小声)」


「(Aちゃん、可愛いわ。)」


「ったく、『傷付けてしまったので俺が責任を取って結婚します』ぐらい言うべきだろ。…不味い、此方に来るぞ。お前ら、ずらかれ!」


…近くで宇髄さんの声が聞こえたのは、気の所為だろうか。


他愛もない話をしながら、皆が居るであろう応接間に移動する。


着けば彼等は既に駄弁りながら食べ始めていた。


しのぶちゃんが手招きしたので、女性二人の間に座る。其処である事に気付いた。


「甘露寺さん、大食いなんですね。」


「もぐっ、蜜璃と呼んで、もぐっ、もぐっと嬉しいわ。」


「はい、それじゃあ私も戴きましょうか。」


早速茶巾蒸しを口に運ぶ。口の中に広がる爽やかな柚子と肉汁が素晴らしい。流石あまね様だ、年季が違う。


柱合会議は二日間に分けて行われる。その為今夜は皆この屋敷に泊まる事となる。


…この期間内に義勇に問い詰めなければならない事がある。余り気乗りはしないと小さく溜め息をついて、刺身に手を伸ばした。

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mikki-(プロフ) - 酸漿さん» ひぇ……お友達さん絵が上手すぎやしませんか????貴方の作品もお友達さんの絵も好きです応援してます!! (2019年7月29日 19時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - mikki-さん» 友達が書いてくれたものです。登場人物紹介に載せているのは、角&耳っこメーカー様からお借りしたものです。紛らわしくてすみません。 (2019年7月29日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
mikki-(プロフ) - 初めまして。質問なのですが、表紙のイラストは酸漿様が描いたものなのですか?教えて下さい (2019年7月29日 18時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 金糸雀さん» その通りです。夢主の母を鬼にしたのも彼です。彼は自ら会いに来るまでは待つ、という約束を律儀に守っています。 (2019年7月7日 20時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - まさか、過去の話に出てきて鬼は上弦・壱ですか? (2019年7月7日 1時) (レス) id: 359e27b0ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年6月16日 19時

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