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貳拾壹 ページ23

一瞬、その言葉の意味を理解出来なかった。


「親父は早くに刺されて死んだ。人に恨まれるような人だったから、特別悲しくはなかった。…そして俺はお袋と兄弟達と七人家族になった。」


淡々と、彼は過去を語って行く。


「ある日、夜になっても 働きに出ていたお袋が帰って来なかった。探しに行こうと 兄弟を残し、一人家を出た時奴に出会った。」


暗くて姿格好はよく見えなかったと彼は語る。奴はいきなり襲ってきたが、運よく持っていた鉈で難を凌いだらしい。


「だが、奴は兄弟達が待つ家に入っていった。それを追いかけて家に飛び込めば、既に兄弟は傷付けられていた。」


がむしゃらにその鬼を外に追い出せば、揉み合いになったのだと言い、彼は遠くを見つめた。


「何度も、何度も、鉈を振るった。」


…そういう、ことか。


「日が昇り、奴が動かなくなった。その顔を確認したとき、絶望した。」


言葉も出なかった。


「鬼が、憎い。鬼さえいなければ、俺は、俺達は、今も。」


しんと静まりかえる。


「なぁ、お前もどうせ抱えているんだろォ?」


その言葉に、思わずびくりと肩が動いてしまう。


「だからさっさと吐いて 楽になっちまえ。俺も一緒に抱えてやる。」


まぁこれでも話す気がないなら(こっち)に頼るしかねェな、と拳を鳴らしながら彼は不敵に微笑む。


…本当、荒業だなぁ。


「良いよ。私も語ろう。…けれども余り面白いものじゃない。」


期待はしないでね。そう言って 目を閉じる。


何年も前の事なのに、未だ鮮明に覚えている。









空から舞い落ちる雪、広がる朱。


『貴女に、全てを背負わせてしまう事になる。それでも私は、』


貴方(・・)に向かって伸ばした手は、空を掴む。


ねぇ、どうして


どうして貴方は微笑んでいられるの?









忘れる、筈もない。


「あの日は、雪が降っていた。」

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mikki-(プロフ) - 酸漿さん» ひぇ……お友達さん絵が上手すぎやしませんか????貴方の作品もお友達さんの絵も好きです応援してます!! (2019年7月29日 19時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - mikki-さん» 友達が書いてくれたものです。登場人物紹介に載せているのは、角&耳っこメーカー様からお借りしたものです。紛らわしくてすみません。 (2019年7月29日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
mikki-(プロフ) - 初めまして。質問なのですが、表紙のイラストは酸漿様が描いたものなのですか?教えて下さい (2019年7月29日 18時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 金糸雀さん» その通りです。夢主の母を鬼にしたのも彼です。彼は自ら会いに来るまでは待つ、という約束を律儀に守っています。 (2019年7月7日 20時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - まさか、過去の話に出てきて鬼は上弦・壱ですか? (2019年7月7日 1時) (レス) id: 359e27b0ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年6月16日 19時

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