什玖 ページ21
「今回の任務、ご苦労だったね。」
「…はい。」
「君は、責任を感じているようだ。」
「私がもう少し駆け付けるのが早かったら、誰も死ぬことはなかったかもしれません。」
「確かにそうかもしれない。でも時を巻いて戻す術はない。」
「…その通りです。」
「今回の件は君に非はない。むしろ無傷で上弦の鬼の情報を手に入れる事が出来たのは、称えられるべき事だ。…これを、受け取ってくれるね?」
「私に、受け取る資格は御座いません。」
「…君は義勇に似て一人で背負い込む癖があるね。まぁ、彼と共に過ごしていたのだから仕方のない事だとは思うけれども。…君は、もっと周りを頼って良い。」
「……」
「君が鬼殺隊史上初の
「……はい。」
「それなら君は前を向いて歩かなければならない。それに、探している人がいるのだろう?」
「…っ、はい。」
「今日はもう下がっていいよ。一週間後にはあれが控えているから。それまで暫く休んでいると良い。」
「有り難う、御座います。」
「辛い時は何時でも仲間を頼りなさい。君はもう独りではないのだから。」
「はい。」
屋敷に戻り、一人夕餉の支度をする。
茶碗にご飯をよそおいながら、ふとその手を止めた。
…偶に、考えてしまう。
もし、鬼がいなかったら。
義勇や実弥、煉獄さんやしのぶちゃん。宇髄さんに三人のお嫁さん達。そして棗や薺。
今の仲間に出会う事は、彼等との思い出は決して有り得なかった。
それでも、もし。
もし鬼がいなかったら。
誰かを理不尽に奪われる悲しみなんて知る事もなく、
毎夜刀を握り 血に染まる事もなく、
私は今も、あの場所で___
「うっ、」
涙が、零れ落ちる。
杓文字が手から滑り落ち、その場にしゃがみ込む。
『Aちゃん! 大好きだよ!』
『Aさん。これからも、宜しくお願いしますね。』
薺、棗、守れなくて本当にごめん。
私は柱だから。どんな時も先頭に立って歩いて行かなければならないけれども、
「ごめんっ、ごめんね。未熟で、ごめんね。」
今だけは泣いて 蹲る事を、許して下さい。
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mikki-(プロフ) - 酸漿さん» ひぇ……お友達さん絵が上手すぎやしませんか????貴方の作品もお友達さんの絵も好きです応援してます!! (2019年7月29日 19時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - mikki-さん» 友達が書いてくれたものです。登場人物紹介に載せているのは、角&耳っこメーカー様からお借りしたものです。紛らわしくてすみません。 (2019年7月29日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
mikki-(プロフ) - 初めまして。質問なのですが、表紙のイラストは酸漿様が描いたものなのですか?教えて下さい (2019年7月29日 18時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 金糸雀さん» その通りです。夢主の母を鬼にしたのも彼です。彼は自ら会いに来るまでは待つ、という約束を律儀に守っています。 (2019年7月7日 20時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - まさか、過去の話に出てきて鬼は上弦・壱ですか? (2019年7月7日 1時) (レス) id: 359e27b0ea (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年6月16日 19時