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什伍 ページ17

「お姉ちゃん、有り難う!」


笑顔でそう言った幼子の頭を撫で、その場を後にする。思ったよりも時間が余ってしまった。


さて、どうするか。約束の時間にはまだ余裕がある。


…彼等の任務がまだ終わっていない可能性も捨てきれない。少し、様子を見に行って見よう。


鴉に彼等が潜入している場所を教えて貰い、件の屋敷を塀からそっと覗く。


天竺牡丹(ダリア)が咲き乱れる、整えられた綺麗な庭だ。この家主は相当金持ちなのだろう。


…だが、何か違和感を感じる。


気配を消して、屋敷の庭に侵入する。


その時、気付いた。


___人の気配が、全くしない。


嫌な予感に鳥肌が立ち、冷や汗が流れ落ちる。私はこの感覚を、よく(・・)知っている。


土足で屋敷に上がり、歩を進めて行く。動悸が止まらず、手足が震えそうになる。


そうして辿り着いた部屋の襖を、開け放った。









目が、合った。









滴る朱に、過るあの夜の記憶。









部屋の中心に置かれておるのは、不格好な一つの壺。


其処に飾られているのは、苦痛に顔を歪ませたあの子の頭。


壺の周りには、飾りのつもりか 剥がされた爪が並べられている。


ゆっくりと視線を上げる。身体は、壁に氷で出来た蔦で磔にされていた。


そして引き千切られた両手は、


___器用に刀を握らせ、刃を己の心臓に突き立てていた。





手を、伸ばす。


恐怖か激痛かに見開かれた目を、そっと閉じさせる。


「間に合わなくて、ごめん。」


そして抱きしめた。









改めて部屋を確認する。


血は部屋全体に飛び散っているが、まだ乾いてはいない。恐らく事が起こってから一刻も経っていない。


…つまりまだ近くに鬼はいる。


涙を拭って、刀を抜く。


鴉に増援を頼み、呼吸を整える。




柱の名にかけて 絶対に、逃しはしない。




鬼の気配がする方へ向かって、部屋を飛び出し走り出した。









…でも悪夢はまだ続いていたんだ。

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mikki-(プロフ) - 酸漿さん» ひぇ……お友達さん絵が上手すぎやしませんか????貴方の作品もお友達さんの絵も好きです応援してます!! (2019年7月29日 19時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - mikki-さん» 友達が書いてくれたものです。登場人物紹介に載せているのは、角&耳っこメーカー様からお借りしたものです。紛らわしくてすみません。 (2019年7月29日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
mikki-(プロフ) - 初めまして。質問なのですが、表紙のイラストは酸漿様が描いたものなのですか?教えて下さい (2019年7月29日 18時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 金糸雀さん» その通りです。夢主の母を鬼にしたのも彼です。彼は自ら会いに来るまでは待つ、という約束を律儀に守っています。 (2019年7月7日 20時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - まさか、過去の話に出てきて鬼は上弦・壱ですか? (2019年7月7日 1時) (レス) id: 359e27b0ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年6月16日 19時

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