ページ ページ12
ーーーーー
ーーーーーーーーーー
脳裏にはティナに連行されて杖の管理局に飛び込んできた青いコートのイギリス人が浮かんでいた。懐かしい訛りの英語。仄かに故郷の土の香りがした。
彼とはノリスとして出会ったけれど、スクイブと知っても態度を変えたりしなかった。
そのかわり中々目も合わなかったし、何を聞いても答えはしどろもどろだったけれど。
トランクにはパンしか詰まって居なかったけれど、実際は魔法動物を入れて、いっしょに世界を回っていたらしい。
「じゃあ、ドラゴンは？
ドラゴンはその旅に連れてってはくれないの？」
魔法動物とトランクの旅。何だか楽しそうと思って、つい「自分」としての質問をしてしまったがその答えが何となく好きだった。きょとんとした彼はそこで初めてぱっと笑って、言ったのだ。
『仲良くなれるドラゴンがいたら、是非いっしょに旅したいかな。友達になれたら旅がずっと楽しくなりそうだから』と。
ーーーあぁ、あの檻の前に居たのが彼だったら良かったのに。
私は確かにその時、ふと思ったのだ。
手を差し伸べてくれたのが彼であったなら、私の運命はきっと大きく変わっていたのだろうと。
彼の返答に「素敵ね」と言った気もするし、「優しいのね」と言った気もする。もしかしたら「バカね」だったかもしれない。少し驚いたような顔をしていたから。
結局彼はティナと慌ただしく出ていって、次に届いた報せは「死刑執行」の通達だけだった。
御主人様の計画の邪魔になる者、思想に意を唱えそうな人間として消される駒。事情は知らないけれど、このタイミングでオブスキュラスを鞄に詰めて現れるなんて笑い話にも成らない。
「……運が悪いだけ、なんて最低ね。
大嫌いだわ。運の引きって。」
これは裏切りだ。
恩知らずの反逆者だ。
きっと私は殺される。
だけれど私はクイニーを捜さなかったし、グレイブスの執務室の前に扉の鍵を放った。
心の中で何度も祈った。
逃げて、逃げて、逃げて。
私みたいに地獄に堕ちないで。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 73人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みかこ(プロフ) - アバンギャルド・マボさん» 神から神託を頂いた……だと……？ちょっと間あけてツク開いたら神のお言葉頂いてて平伏しました。やべぇ(語彙力消失)自分が逆立ちしても思いつかなかったアイデアで脳ミソが革命起こしてますどうしよう。絵なり文なり何かしらで形にしたいです好きです(一息) (2019年11月12日 20時) (
レス) id: 3d953e5ca0 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - (絵本にもなっていて、優しい絵柄で読み聞かせのたびに親の涙腺を殺してくる感じの話だったり…。ニュート自身が彼女の恋心に気がついていたかは別として、朴訥と見たままに書いているので、読む人には「ああ…」ってわかっちゃうアレです。(狼王のロボポジ) (2019年11月7日 19時) (レス) id: b4015b5421 (このIDを非表示/違反報告)
アバンギャルド・マボ(プロフ) - 完全に妄想なのですが、ニュートスキャマンダーが唯一書いた児童文学に、「Dragon girl」があったりしたら…と思っちゃったりしてます。 (2019年11月7日 18時) (レス) id: b4015b5421 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みかこ | 作成日時：2019年10月26日 10時
