マクーザと危機 ページ6
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「──こっちよ、あの角を右」
鳴り響く警報、同じ方向に走っていく職員の中、３人は流れに逆らって廊下を駆けていた。
ジェイコブから借りた背広を頭から被るメラはどこからどう見ても何かの犯人だが、場所柄誰も疑問に思わないらしい。混乱も却って幸いした。
その事にホッとしつつ、嗅覚を頼りにメラはニュートとティナの匂いを追う。グレイブスや闇祓いに鉢合わせしないように道を選んで、辿り着いたのは黒ずんだ銀の重い扉だった。
──２人とも同じ部屋だわ。
消え入る様な声。冷たい板に触れたメラに、クイニーも震える指で続いた。
「……ねぇメラさん、貴女の気持ち分かるわ。もしティーニーが死んでたら、わたし」
「マスターが何かしてるはずよ。きっとそう」
メラの言葉はほとんど願望だった。扉を開けた瞬間に砕けるかもしれない希望だ。この金属の板一枚の向こうに、全ての結果がある。
息を止めて、目を閉じて、一思いに扉を強く押した。見るのが怖い。けれど見ない訳にも行かない。ジレンマの中、彼女は固く瞑った目をそっと開く。
真っ白な空間。鼻が曲がるような毒薬の匂いと、溶けて染み付いたみたいな死臭。──けれど待って、倒れているのは！
「2人じゃない……2人じゃ無いわ！執行人の方よ！」
３人共思わずお互いを見て──間抜けに開いた口元を押さえた。安堵で全身が砕けてしまいそうだったけれど、理性がそれをギリギリで止める。
「そうなると、二人はどこだ？」
ジェイコブが絞り出した一言に、魔法が解けたように空気が動いた。弾ける様に全員が駆け出し、メラは大きく息を吸う。
「人が固まってる場所が近いわ。きっとそこよ！」
物陰に隠れながら。柱の影から影へと。薄暗い地下の闇に紛れて３人は走った。倒れて居る闇祓い、砕けた階段。
高まる緊張感の中、差し掛かった角で歩幅を緩めた。──足音がする。
臨戦体勢で走り出たメラの視界にはティナと──くたびれた青いコートが飛び込んだ。土と草。動物と殆ど変わらない乾いた香り。特徴的な癖毛、そばかす。
一瞬でぼやけた景色、つんとした鼻の奥。熱い水の膜が張る目をこれでもかと見開いた。メラ、と低い声が。焦がれた声が鼓膜を揺らす。
生きてた、生きてた生きてた、生きててくれた！
半ば放心した少女の思考を、クイニーの鋭い声が止めた。ここに再開の時間なんて無い。彼女はトランクを指し示して。
「入って！」
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とーふ(プロフ) - 心情の変化を細かく描いてくださっているので、場面が変わるごとに私自身も感情が変わってました笑 素敵な作品をありがとうございます。少しずつ関わり方も変わるのかな？と思いながら、更新を心待ちにしております！ (2022年4月10日 0時) (
レス) @page31 id: ab5a3330b3 (このIDを非表示/違反報告)
時々雨(プロフ) - スクイブってマグルにも魔法族にも何にもなれぬとても難しい位置にいるんだと感じました。なかなか進展しなそうな難しい恋ですね、これからどうなるのか楽しみです♪ (2022年1月29日 8時) (レス) @page31 id: 6532c97378 (このIDを非表示/違反報告)
Kaede.0807(プロフ) - めっちゃ好きな作品です!更新楽しみに待ってます!! (2020年11月15日 20時) (レス) id: 3d85b18928 (このIDを非表示/違反報告)
nasiremon - 取引のところで泣きました……夢主の気持ちが心に刺さりました……あとニュートがかっこいい……更新頑張ってください！！ (2020年6月17日 23時) (レス) id: fa0cba8ed9 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます！私事で更新が間延びしてしまいましたが、これからものんびり更新していく予定です！ニュートと夢主の行く末を何卒これからもよろしくお願いします！！ (2019年10月22日 17時) (レス) id: 3d953e5ca0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みかこ | 作成日時：2019年2月3日 19時
