Dragon girl 2【ファンタビ】

ドゥーガルと屋根裏 ページ22

「みんな、何か虫を見つけて！何でもいい、虫とティーポットを！早く捜して！」


《かざり》と。目を青く光らせたドゥーガルがたった一言、呟いた時にはすでに事態は混沌へと落ちていた。


クイニーが"かざり"──もといクリスマスの飾り玉を爪先で蹴ってしまった事から始まり、驚いたオカミーがパニックで暴れ始める。ニュートが落ち着かせようとして背中に乗り上げて───あぁもう、どうして今日はこんなに大変なの！


ニュートの言葉をうけ、言われたモノを探すためおのおの四つん這いで這いながら、メラは内心で悪態を吐いた。


オカミーが大きくなった場所が民家とか人の居る建物じゃなかっただけよかったけれど、逆に救いがそれしか無いのがなんとも言えない。そろそろマスター落ちそうだし。


メラは嘆息混じりに咆哮し、部屋全体を震わせた。オカミーが一瞬びくりと動きを止め、ギリギリの均衡を保っていた荷物の山がまばらに散らばる。──そして、狙い通りと言えば狙い通りに、


「まって、こういうとこに居る虫って……！」


重箱の隅をつつく、とはこう言う事を言うのだろうか。かさかさ乾いた音を立て、荷物の隙間から逃げるように出てきたのは黒く光って触覚の長い───


「ひっ……」


木箱の上を走るそれがコロリとメラの胸元に転がり、メラは盛大な悲鳴をあげる。キリキリ、固い羽がきしむ音に背筋が凍った。


───ほんとにこれ、同じ羽がある生き物としても許容できない！


それでも歯を食い縛りながらキャッチしたと同時、ティナが白い陶磁器を掲げて叫んだ。


「見つけたわ！ティーポットよ！」

「じゃあそこにゴキブリを入れて！」

「持ってるのはメラさんでしょ！？」


言わないで！と。現実を逃避する悲鳴を上げるメラに、ティナから「投げたら良いじゃない！」と鋭い指摘が飛ぶ。汗ばみ始めた手から半泣きで投げたそれを、彼女は見事にポットでキャッチした。


オカミーがぐるりと宙を舞い、ティーポット目掛けて飛び上がる。巨大な蛇がまるでおもちゃのゴム蛇みたいにしゅるると縮んで───


「伸縮自在だ。狭い場所ならそれに合わせて縮みもする」


ぱん！と景気の良い音と共にニュートが陶磁器の蓋を閉め、辺りにはがらんとした空間が広がる。ポットから何かこう……固い何かをかじるような音が響いたけれど、精神衛生上の問題で無視を決め込む。


メラは顔をひきつらせながら、すぐそばのよく分からない布に手のひらを擦り付けた。

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