グレイブスと少女 ページ45
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「───ここはどこ?」
横倒しになった世界にメラは思わず眉を寄せた。響く様な全身の痛み、見馴れない簡素な執務室、無造作に置かれたトランク、冷たい地面に手足を固める硬質な金属の輪。
手錠じゃない──外すことを想定されて居らず、ただ四肢を固定して拘束するためだけに魔法で作られた鉄の枷が、彼女を芋虫の様に床に転がしていた。
何が起きたの?
メラは必死に思案する。
あの時トランクの鍵を閉められて、しばらくしていきなり開いて……そうだ、ニュートが絶対外に出ないでとメラに言い含めた。
3時間経っても戻って来なかったら勝手に探しに行く条件を付けて、それで……少しして戻って来たのは───いや、違う。
戻って来たんじゃなくて、「入って来た」。──あれは、
「───っあの男!」
きっと、鍵を掛けたのはティナだ。あの時ニュート達の逃亡に気付けたのは彼女しか居ない。トランクはマクーザに取り上げられでもしたのだろう。
そして、「グレイブス長官」と呼ばれていたあの男。勝手に中に踏み込んできたのは、紛れもなく彼だった。
身体が頑丈に成ってから、酷く鈍った痛覚でも分かる痛みだった。それほどまでに強力で、暴力的な。
全身の骨が軋む感覚の理由を思い出し、メラは愕然とする。何とか身をよじって反対側の景色を見ようとして──ひゅ、と息を飲んだ。
気配が一切無かった。物音一つ立てず、黒い影が背後に現れたのだ。上質な仕立てのスーツに丁寧に撫で付けられた髪、抜けるような夜の香りを纏った壮年の男が。
「……グレイブス」
「やっと起きたか。ドラゴン・レディ?──いや、正しくメラ・フィルチと呼んだ方が良いかな」
「……調べたの?私の事。さっきも直々に痛め付けて下さったし、お役人様って実はとっても暇なのね」
「いいや、君の正体を知ったのは成り行きだ。こう見えて私は多忙でね」
メラの皮肉にグレイブスはくつくつ笑う。その含みある笑みに嫌な予感が胸に広がった。
元々この状況で良い予感など一つもしないけれど、今本当に恐ろしいのは──彼が「私の名前を知った」と、わざわざ私に伝えた意味だ。
「ねぇ、マスターは……ニュート・スキャマンダーはどこなの」
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みかこ(プロフ) - るとさん!読んでくれてありがとう(涙)やっちゃった……こう言うのは勢いだよね((ジェイコブさん良いよね!めっちゃええ人……(尊い)むらむら更新だと思うけどのんびり頑張るね(゜∇^d)本当にありがとう! (2018年12月19日 8時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
木兎宮ると(プロフ) - おお!ついに公開したのだねっ!!(歓喜)ニュートも好きだけど、ジェイコブさんが本当に好き(尊い)ので沢山出しておくれ…(願望)無理せずに更新頑張ってd( ̄  ̄) (2018年12月18日 19時) (レス) id: 68f0c4b0f7 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - 衛さん» わああ衛さんまで駆け付けてくださって……感謝の言葉が見つかりません嬉しいです(つД`)ジェイコブさんも大好きなので絡ませて行きたい……ゆるっと頑張りたいと思っておりますので気力続く限りお付き合い頂ければ幸いです(涙) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - アイカ@低浮上さん» イメログからありがとうございます!何だか絵だけじゃ物足りない気がし始めてしまって……あれよあれよと勢いで公開してしまいました汗お褒めの言葉までありがとうございます!精進します( ;∀;) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - アバンギャルド・マボさん» マボ様に読んで頂けたなんて幸いです(涙)そして恐縮でございます汗応援ありがとうございます!自分なりに頑張ります( ´∀`) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みかこ | 作成日時:2018年12月16日 20時