Dragon girl【ファンタビ】

ニフラーと捕獲 ページ35

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回って落ちたシャンデリア、踏み荒らされた宝石箱。散らかし放題の店内で、破壊音とニフラーの必死の叫びだけが響く。


「メラ！ここで押さえるから完全に動きを止めて──」


箱の頂上でニフラーを追い詰め、腕を降りかぶったニュートの声が尻すぼみに消えた。地面に散らばるクリスタルの破片を避けながら、息を吸ったメラの勢いも失速する。


「……ちょっと待っていやよ」


重量オーバーだったらしい宝石箱がバランスを崩し、ショー・ウィンドウの一枚に向かって倒れ出す。びたん！といかにも痛そうな音がしてメラは思わず目を閉じた。


ガラスに叩き付けられたニュートとニフラー。当然ヒビが入り始めた大ガラスの末路は見えていた。──粉々に割れるだけだ。


盛大に地面に転がる一人と一匹に天を仰ぐ。店の向こうでメラと同じく、ひやひやとこちらを見ているジェイコブに同情した。


──マグルのこういうお店って、すぐに「ケーサツ」っていう人達が飛んでくるんじゃなかったかしら？


ニュートが何か呪文を使ったのか──宝石が宙を舞う光景が目の前で展開されるのを見ながら、窓枠を乗り越えて外に出る。近くで見ると、ジェイコブが本当に青ざめて居るのが分かった。マートラップの毒より酷いかもしれない。


「お、おいメラ……不味いよこれ……」

「そうね……立派な強盗犯って感じ」


ポケットにも頭にも流れ宝石。ジェイコブも、窓ガラスにニフラーを貼り付けることでようやく捕まえたらしいニュートも──正しく現行犯にしか見えない。言い訳の余地なしだ。


「一匹捕獲、あと二匹！」

「それは良かったけどマスター……あぁやっぱり来た」


一難去ってまた一難。けたたましいサイレンと、銀行でも見た武器が一斉にこちらに向けられる。


「手を挙げろ！子供を人質に取るなんて！」

「何よ！子供じゃなんむぐぐ！」

「おい、子供を離せ！」


もはや条件反射で怒鳴りかけたメラの口を、慌ててニュートが塞いだ。そのままコートに押し込まれ、包囲網の緊張感が更に高まる。


子供子供連呼しないで！
どうにかして反論しようと彼のコートから顔を出して──絶句した。メラだけじゃない。全員一点を見つめて声を失う。


──ライオン？


「ふーむ、ニューヨークって思ってたよりもずっと面白い所だね、メラ」

「……この状況でそれ言えるのマスターだけよ」


余りに呑気なニュートの発言に呆れ返ったと同時、ぐるりと視界は回った。

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