トランクと脱出 ページ32
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「何でって──出来心ね。
パパのお店で売ってた魔法の杖の材料を食べちゃったの。
元々は目だって普通のブラウンだったし、鱗も羽も無かったのよ」
ただの10歳の子供だった。
黄金色の瞳をくるりと動かし、あぜんとする彼に肩を竦めてみせる。
「……それって魔法使いの世界じゃよくあること？」
「前例すら無いみたい。魔法使いって皆、杖の凄さと恐ろしさを何処かで知ってるもの」
──じゃあ何でメラは、
全くもって腑に落ちなさそうに質問を重ねようとした彼は、ふと眉根を寄せて後ろを振り返った。つられてそちらに目線をやれば、空間の一部が不自然に揺れている。
「待っておじさま、そこは──」
蜃気楼の様に揺らぐヴェール。ジェイコブは心を奪われたようにそれを潜ってしまった。
一面の雪景色、闇の空。苦しい位の圧迫感の中、黒い油に似た球体が浮く。メラは「それ」を久々に見た瞬間、全身が総毛立つのを感じた。
匂いも言葉もない異常な生物に、絶対に近付くなと本能が叫ぶ。足が動かない。止めなきゃいけない、分かってるのに！
「やめ、」
「──下がって！」
立ち竦んで居たメラを庇うように押し退けて、事態を発見したニュートが鋭く叫ぶ。間一髪、回る黒に触りかけていたジェイコブは、飛び上がり危機を脱した。
「下がってて……」
「これ何なんだ？」
「いいから、下がってて」
「一体何なんだよ？」
オブスキュラス、とニュートの唇が苦々しげに紡ぐ。彼の苦悶の表情の原因を、メラも鮮烈に覚えていた。
幼いアフリカの少女。望まない力をもて余し、死んでしまった。私とは「真逆」の女の子。
──神様は欲しがる者には下さらない。
──けれど不要でも聞く耳持たない。
あぁそれって、なんて、
「メラ、」
揺らぐ一点から目を離せなくなったメラの頭を、宥める手付きでニュートが撫でる。その瞬間、縦に全開だった瞳孔が丸みを帯びた。
彼の淡い翠の光彩の瞳、物言いたげに開いた口。メラはふと我に返り、取り繕う様に苦笑する。
「……私やっぱりこれ嫌いよ」
そうだね、と。哀しげな顔でメラの羽を撫でたニュートは、「もう行こう」と小屋に向かって歩き出した。彼の背を追うメラはふと、思い出した様にジェイコブに向かい合う。
「そういえばおじさま──私、まだフルネーム言ってなかったわ。マスターの認めた人だもの、きちんと名乗らないと。
メラ・フィルチっていうの、よろしくね」
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みかこ(プロフ) - るとさん！読んでくれてありがとう(涙)やっちゃった……こう言うのは勢いだよね((ジェイコブさん良いよね！めっちゃええ人……(尊い)むらむら更新だと思うけどのんびり頑張るね(゜∇^d)本当にありがとう！ (2018年12月19日 8時) (
レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
木兎宮ると(プロフ) - おお！ついに公開したのだねっ！！（歓喜）ニュートも好きだけど、ジェイコブさんが本当に好き（尊い）ので沢山出しておくれ…（願望）無理せずに更新頑張ってd(￣ ￣) (2018年12月18日 19時) (レス) id: 68f0c4b0f7 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - 衛さん» わああ衛さんまで駆け付けてくださって……感謝の言葉が見つかりません嬉しいです(つД｀)ジェイコブさんも大好きなので絡ませて行きたい……ゆるっと頑張りたいと思っておりますので気力続く限りお付き合い頂ければ幸いです(涙) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - アイカ@低浮上さん» イメログからありがとうございます！何だか絵だけじゃ物足りない気がし始めてしまって……あれよあれよと勢いで公開してしまいました汗お褒めの言葉までありがとうございます！精進します( ；∀；) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - アバンギャルド・マボさん» マボ様に読んで頂けたなんて幸いです(涙)そして恐縮でございます汗応援ありがとうございます！自分なりに頑張ります( ´∀｀) (2018年12月17日 0時) (レス) id: 243d49e4e1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：みかこ | 作成日時：2018年12月16日 20時
